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 早朝、イルカ先生は目が覚めると俺の顔を見て「おはようございます」と、とても正しい挨拶をした。
 挨拶は正しくしたけど状況はまるで理解できてなかったようだから俺が昨晩のことを説明し、今は何時何分で、本日は中忍試験初日ですよと教えてあげた。イルカ先生はベッドの上で正座をし、「大変お世話になりました」とペコリと頭を下げた。それから自分の股間を見て「おはよう、マイチンコ」と朝勃ちチンコに挨拶をし、ついでに俺の股間にも同じように挨拶していた。
 まだ時間に余裕があったから、俺とイルカ先生は一緒に朝ごはんを食べた。パンを焼いてバターを出して、目玉焼きを作ってあげる。それから新鮮なオレンジを絞ってあげた。俺は一睡もしてないけど、すっごく爽やかな朝の食卓だった。
「俺、今日からオナニー禁止マラソンに入ろうと思います」
 こんがりと焼けたパンに齧りつきながら、イルカ先生がそう言う。
 俺達オナニストはオナニー禁止週間を作ることがままある。大抵は常にフル稼働しているタマキンを休息させる意味と、オナニー禁止週間明け特有の「おちんちんが爆発しちゃうよぉっ!」って感じのあの快感を目的としたものだ。しかし今回のイルカ先生のオナ禁はそういうものではないとすぐに分かった。
「ナルト達への願掛け?」
 俺が問いかけるとイルカ先生はキリっとした顔でコクリと頷いた。
「じゃ、俺もオナ禁マラソンに入ります。アイツらが全員無事に試験を終えられるように」
 中忍試験は過酷だ。って俺は上忍師初めてだし六歳で中忍になっちゃったからあんまり知らないけど、とにかく過酷なんだそうだ。だから七班の子供達の無事を祈り、俺もオナ禁マラソンを始めるんだ。
 それから俺達は二人で、オナ禁が明けた後は何でヌくのかを綿密に計画しあい、アレは刺激が強すぎるとかコレはマニアックすぎて変態道に入り込みすぎそうだとか、とにかく色々と話し合いながら朝ごはんを食べた。
 食べ終わるとイルカ先生を見送って、俺は二度寝をして、良い頃合いに目覚めて試験会場に行った。七班の子供達のことは心配だったけど、第一試験会場の外で様子を窺ってみたところ意外性ナンバー1忍者のナルトが元気だったから、まぁ何とかなるだろう。その後上忍待機所で第一試験官がイビキだと聞いてちょっと引いたけど、これもまぁ何とかなるだろう。更にその後試験に大蛇丸が介入していると聞いてドン引きしたが、これもまぁ何とか……なんねーよッ!
 第三試験予選の前にイルカ先生と顔を合わせて、情報交換をした。第二試験が死の森だったのでドキドキしてたけど、七班は無事だったようだ。サスケは色々あったみたいだけど。
「でね、俺その時思ったんです。この子たちの力を本当に分かっているのは、カカシさん、あなたの方かもしれませんねって」
 イルカ先生が少し寂しそうな顔で微笑んでそう言う。もうその表情は儚いって言うか可憐って言うか射精後の賢者タイム的って言うか、もうホントに何て言うか。あんぎゃー!
「とんでも八分歩いて五分車で行けば十五分ですよ! うわ俺ふるー! じゃなくて、サスケも色々あったし、ほら。ね? 俺なんてまだまだですよほら上忍師初めてだし。イルカせんせの方がアイツらのこと理解してるし俺なんてもうまだまだです。まだまだ若造、精通したばっかの小僧みたいなもんですよ!」
「……なんて考えてた頃が俺にもありました」
「は?」
「でもよくよく考えてみれば、やっぱ危ないじゃないですか! 七班の子供達は運が良かっただけでしょう? サスケなんてもう少しで死ぬところだったんですよ! ばか! カカシ先生のばか! あんぽんたん! だから俺はまだ早いって言ったんですぅー! 俺が正しかったんですぅー!」
「ですよねー! 何でもイルカせんせの言うとーりー!」 
 憤慨してプンスカプンスカしているイルカ先生を必死で宥め、ペコペコと頭を下げて謝っていると同じ上忍師仲間が集まって来た。口ぐちに「カカシが悪い」とか「イルカせんせの言う通り」とか言って煽るもんだから、イルカ先生は余計俺に憤慨して真っ赤になって怒ってた。て言うか、ガイはともかく紅とアスマも俺と同じじゃないの!って思ったけど、イルカ先生の意識がその二人に向くのが嫌だったから賢明にも俺は何も口にせず、ひたすら謝り通してた。
「なぐってやる! 主にグーで!」
「主にパーにして!」
「駄目です! 主にグーです!」
 イルカ先生が頑なにそう希望するから、俺は大人しく主にグーで殴られた。詳細は、パーが三回、グーが七回だ。
「青春だぁあ!」
「うおお!」
「感動的だわ!」
 外野がうるさかったけど、別に良い。イルカ先生は俺を主にグーで殴り飛ばした後、俺をぐっと抱きしめてくれたから。こう、ぐっと。ぐっとって言うか、ぎゅっと。そして俺も抱きしめ返したから。それはすっごく感動的なシーンだったと思う。誰かドラマにすべき。視聴率二十五パーセントは固い。
 そんな感じで青春真っ盛りの俺は良い気分でいたのに、第三試験の予選が始まるとすぐにとんでもないことが起こった。
 オカマの大蛇丸だ。
 大変なことになっちゃったサスケの呪印を封じようと、結構得意気になって封印の法術を使ったらオカマがやって来たんだよね。サスケを狙ってるって言うから、俺は本当にサスケの尻方面を心配した。あれ? 大蛇丸ってオカマだから、心配すべきはサスケのチンコ? いや大蛇丸の性癖は変則的っぽいから、尻方面もチンコ方面もどっちも心配だ。
 刺し違えてもサスケの尻方面を守ってやる! って思ったけど、無理っぽかった。オカマ、こわい。
 でも大蛇丸がさっさとどっかに行ってくれて、「あら、戦わずに済んだ。俺ラッキー!」って試験会場に戻ってみると今度はサクラの番で、とても頑張って戦っていた。残念な結果に終わったけど、サクラの成長が見られて本当に嬉しかった。
「いろいろあったけど、この中忍試験に出して良かったと……心から思ってるよ」
 思わずそんなことを口走ったら、どこからかイルカ先生がやって来てグーで殴られた。確かにサクラが砂の連中と当たったら殺されていたから、素直にごめんなさいって言っておいた。でもごめんなさいって言ったのにその後約十五分ほど俺はイルカ先生に説教されるはめになった。イルカ先生の説教が長いことを知ることができたので、ちょっとラッキー。今日はツイてるなっ。
 その後ナルトが頑張って、ヒナタとネジの闘いに介入したら「宗家は特別扱いか」って言われちゃって、リーくんと砂のひょうたんの試合の時にガイに「私情をはさむなとは言わないが、限度ってもんがある。見損なったぞ、ガイ」ってちょっとムっとして咎めてみたら、またどこからかイルカ先生が飛んできてグーで殴られた。
「私情をはさんで悪いかぁあああ!! えこひいき教師って言うなぁあああ!!」
「いや、俺は私情をはさむなとは言わないが、って言いましたから!」
「ナルトォオオオオ!」
「イルカせんせ、落ち着いて!」
 そんな感じですったもんだした。すったもんだした後、イルカ先生はキリっとした顔で「俺はアカデミーの授業がありますから」って言って去って行ったから、イルカ先生は物凄く地獄耳で、木ノ葉一の長距離瞬身術者ってことを知ることができた。俺ってばどんどんイルカ先生に詳しくなってるぅ! ひゃっほーいっ。
 とまぁ、うれしはずかし浮かれ気分を満喫していたのに、その後また大変なことが起こった。
 謎の丸メガネだ。
 木ノ葉商店街にあるファッションセンターカブトの店員に似ているような気がしたが、どうやら別人みたい。舐めた口を利くからあったまにきちゃったけど、結構強かった。オカマと対峙した時みたいな、やだ、こわいっ!俺の尻方面的に!って感覚には陥らなかったけど、ま、やるじゃない?とは思った。ニュータイプ的俺の超直感がそこまで反応しなかったってことは、丸メガネの性癖は普通なんだろうと思う。
 しかしあの丸メガネ、なんてセンスなんだ。あのメガネはないよね。そういう意味でこわい!
 とにかく、そんなこんなで第三試験予選は終わった。


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