「それからはもうぐっちゃぐちゃでした。みんな、よくもイザベラをぉお!って叫びながら鬼みたいになってて。勿論俺も猛烈に怒ってましたからね、暴れまくりました。気が付けばどこもかしこも血の海。そうして俺達はイザベラの仇を取ったのです」
熱いお茶を飲みながら、俺はイルカ先生に報告する。
イルカ先生は目をうるうるさせて溢れそうな涙を手の甲で拭った。
「熱き男達の絆と、喪ってしまった空気嫁への愛、見事な敵討。どれもこれもとても感動しました」
鼻をすんすんさせながら、イルカ先生がしんみりと呟く。
興奮してメチャクチャに暴れ回ったせいで盗賊のアジトはぐっちゃぐちゃになり、新薬の回収に戸惑って予定より遅く帰還した後は報告書と面倒事の一切を狸面に押しつけ、俺はそのままイルカ先生の家に直行した。おかえりなさいと笑顔で迎え入れてくれたイルカ先生は、何はともあれ俺のチンコを握り「これが噂のチンコカップですね」としきりに感心していた。
その後一緒に夕飯を食べて風呂に入って血を流し、一息吐いたところで本日のイザベラ騒動について話して聞かせたところ。そんで俺の思惑通りイルカ先生が感動の渦に巻き込まれたところ。これで俺の好感度は更にうなぎ上りのはずで、もしかしたらイルカ先生はもう半分くらい俺に惚れちゃってるかもしれない。うふふ。
明日は中忍試験本戦なので、その日は早く寝ることになった。
しかしイルカ先生の隣にくっついただけで俺の下半身の極一部は完全に目覚め、むしろ今からが本番だろ?って俺に囁きかけてくる。いやいやダメダメ、イルカ先生は明日忙しい。早朝から会場で最終チェックをしなきゃなんないし、それが終わるとアカデミーで授業、昼にはまた会場に戻って弁当の配布、それからまたアカデミーに戻って……イルカ先生のスケジュールに誰よりも詳しい理性的な俺が下半身を叱りつける。
ああでも駄目。昨日は一日中イルカ先生と離れてたんだもん。我慢なんてできない! いやそこを我慢しなくてはならん。上忍の忍耐力を持ってですね――。
最初はそんなことを考えていたのに、狭いベッドの中でイルカ先生の匂いに包まれていると頭がぼーっとしてきた。
身体が勝手に熱くなっていくのが分かる。自分の手が無意識にイルカ先生の身体を弄り始め、いやらしく蠢く。顔を寄せて小さなキスを繰り返し乳首を摘まんで指の腹で優しく捻っていると、イルカ先生の黒い瞳がとろりと濡れてきた。
「ねぇ、今日は指入れて良い?」
手を滑らせて緩く勃起し始めたイルカ先生のモノを掴みながらそう訊ねたけど、意味が分からなかったようで怪訝な顔をされた。
「お尻に指、入れても良い?」
なるべく怖がらせないように、さりげなく訊いてみる。
「アナニー?」
「そ、アナニー。すっごく気持ち良いって言うし、してみたい」
してみたい。イルカ先生のアソコに挿れてみたい。それで喘がせてみたい。チンコだってしゃぶってるんだから、指を入れても良いと思う。構わないと思う。嫌われないと思う。
それなのにイルカ先生は渋った。流石にそれは、と嫌がる。
「絶対気持ち良くするよ? すっごく気持ちイイよ? 少し入れるだけだから。嫌だったらすぐに止めるから」
甘い声で強請りながら手にした先端を親指でグリグリと押す。ピクリと身体を震わせたところで耳朶を噛み、絶対気持ち良くするから、と押しきった。
フェラチオしても怒られなかった。だから俺は最近随分図々しくなっていた。
あまり気乗りのしない様子のイルカ先生を裸にして、俺も全裸になる。いつものように身体中に触れて勃起したモノを可愛がってやり、身体を移動させてそれを口に含んだ。
「ああっ」
媚びるように上がるイルカ先生の嬌声が可愛くて仕方ない。もっともっと気持ち良くさせてあげたい。
一杯イイことしてあげる。優しくしてあげるし、楽しい日々を送らせてあげる。
辛い時も悲しい時も、気持ちイイ時も全部一緒にいるんだ。
そしたらイルカ先生も、俺のことが好きになるかもしれない。
潤滑剤なんて気の利いたものはこの家にあるわけがないから、俺はイルカ先生がトロトロになって来た頃合いを見計らってお尻の穴に指を当てた。
「あ、やっぱ嫌ですそこ!」
即座に却下される。でも最近調子に乗っている俺は構わずそこを指で撫で回す。
「ちょ、ちょっと!」
「だってまだ何にもしてないじゃない。入れるだけ入れてみて、それから判断してよ」
指を離して自分の口に含み、唾液でグチョグチョにしてからもう一度そこに触れてみる。硬く閉じられているけど、撫で回しているうちに少しだけ解れてきた。
口にイルカ先生のモノを含みながら、第一関節辺りまでぐいっと押し入れる。中はあまりにも狭くて、肉壁が異物に対して拒否をしているのがありありと分かった。
イルカ先生が嫌悪感に呻くのが聞こえたが、俺はそのまま指を進める。
「やっぱ嫌です」
泣き言まで可愛い。愛しい。
中を慎重に進みながらイイ場所を探す。知識としてはある。誰に対してもやったことはなかったけれど、一応人体に関することだから暗部時代に覚えた。
指を曲げてそこを探っていると、イルカ先生が俺の髪を掴んだ。
「嫌ですって! 嫌だったら止める約束でしょ?」
ちょっと怒ってる声だったから、慌てて性器から口を離しイルカ先生を見た。
片肘を突き斜めに身体を起こして俺を睨んでるその瞳はちょっと潤んでいて、目の辺りは興奮で赤くなっていて、それはそれは色っぽかった。
「もうちょっとだけさせて? 本当に、もうちょっとだけだから」
お願い、と懇願すると、ブツブツ言いながらイルカ先生は身体を横たえる。でもそれからも、俺が指を動かす度に嫌だ嫌だと言っていた。気持ち悪い、もう止めて、もう嫌だ。そんなことばかり言う。
でも俺がある一点に触れると全部が激変した。
「ァッ!」
背中を反らせ足先まで強張らせて、イルカ先生が鳴く。先走りがドロリと溢れ、俺は喜んでそれを舐め取った。
ここなんだ。
もう覚えた。
そこを押してやる度にイルカ先生の身体がビクビクと震える。嫌だ嫌だと言っていた口からはひっきりなしに喘ぎ声が漏れ、性器は今にも射精しそうで俺は勿体なくて口を離した。
指を包む肉壁が驚くほど熱くなる。気持ちイイくせに逃げ出そうと暴れる足を片手で掴み、俺の肩に乗せた。
凄く興奮した。イルカ先生がお尻で感じていることに、おかしくなるくらい興奮した。
指でそこを苛めまくると嬉しそうにギュウギュウと締め付けてくる。咥えて欲しそうに涎を垂れ流す性器の先端を舌で少しだけ舐めてやると、もっと舐めてと強請られた。
嬉しくて馬鹿になりそう。でもまだイかせてやんない。
セックスするみたいに指を出し入れするともっと興奮する。たまんない。おかしくなる。
俺はケダモノみたいに息を荒くして涎を垂らし、イルカ先生のやらしい汁を顔に塗りたくるように頬に性器を擦り付けた。愛しくて愛しくてどうにかなりそうだった。
したい。もっとしたい。いやらしいことをもっとして、イルカ先生とセックスしたい。
セックスしたい。
二本目の指を押し入れて強くそこを押すと、イルカ先生は悲鳴みたいな声を上げて足を俺の首に巻き付け腰を突きあげた。
あまりの可愛さに我慢できなくなって、性器を口に含んであげる。しゃぶって唾液と淫汁ごと力一杯啜りあげてやる。
息を飲む音が聞こえてその身体全部が強張り、俺の口に精液が放たれた。
飲んであげる、全部飲んであげる。
一滴も零すものかと全て飲み干すと、イルカ先生の身体から力が抜けた。俺は嬉しくてまだ中に入れたままだった指を動かしてみたけど、今度は頭を叩かれた。イったすぐ後だから、キツイか。
名残り惜しかったけど指を抜いて、身体をよじ登るみたいにイルカ先生の元に帰る。
「気持ち良かったでしょ?」
俺が訊ねると、イルカ先生はすっごく嬉しそうに笑った。
「凄かったです。最高でした!」
よし、これで次からもお尻に指を入れることを許してもらえる!
俺がニマニマしてキスをすると、イルカ先生もキスしてくれた。
俺達は恋人同士みたいだった。
イルカ先生は気付いてないけど、本当は俺のことが好きなのかもしれない。いや、好きなんだよ、絶対。そうに決まってるよ! だって俺達こんなに仲が良いもん。キスだってするし舐めても指を入れても怒られない。それどころか喜んでくれる。信頼だってされてるし、こんなに近くにいさせてくれる。お互いに気持ちイイことして、キスして、笑いあって、これってもう完全に恋人同士じゃないか!
それからイルカ先生はお返しにと俺のモノを手で掴んで扱いてくれた。興奮しきりだった俺は若造みたいにすぐに射精し、出した精液を指に塗りたくってもう一度イルカ先生のお尻の中に挿入させてもらった。
イルカ先生は本当に気持ち良さそうで、ずっと可愛い声で鳴いていた。やらしいことも口走っていた。腰も振っていたし「もっとしゃぶって」って強請ってきた。
俺もイルカ先生も、その日は一杯出した。
とても幸せだった。
「わー、明日早いのにもうこんな時間」
精液でベトベトになったシーツを変えて簡単にシャワーを浴び、ベッドに倒れこんだイルカ先生が時計を見てそう言う。
「ごめんねー。でも気持ち良かったよね」
「最高でしたよね」
顔をくっつけ合って、クスクスと笑った。
俺達は本当に仲が良いんだ。もう誰もこの絆を壊せやしないよ。
幸福に浸っていると、イルカ先生が大きな欠伸をしてからトロンと眠そうな目をして言った。
「カカシ先生は、どんな妄想をしながら俺にアレコレしてるんですか?」
「は?」
「ふたなり萌えなんでしょ?」
そうだった! そう言いくるめて色々させてもらってるんだった。でも俺、イルカ先生が好きで、だからそんな妄想する必要なんてなくて。
「えっと」
「俺は大抵、巨乳くノ一にフェラされてる妄想してます。うわー、そんなことまで、俺童貞なのに良いんですか!みたいな。でも今日は、昼間はスーパーでバイトしてる淫乱巨乳お姉さんにアレコレされてるって妄想してました」
大きな欠伸をして。
イルカ先生は笑ってそう言って。
そのまま眠った。
なにそれ。
俺達こんなに仲が良いのに、キスだってしてるのに、なにそれ。
あくまでオナニーなの? 全部オナニーなの? 俺とキスしてる時も、頭ん中では巨乳くノ一とか淫乱お姉さんとかとキスしてんの? 俺が愛情込めてアンタのチンコ舐めてる時も?
ああ、そうだったねそうだった。
リハビリとか何とか言って、俺が言いくるめただけだったね。うん、オナニーだよね。イルカ先生にしたら、ただのオナニー。イルカ先生から見たら、俺もオナニーしてるだけ。
なにそれ。
いっぱいキスしたのに。あんなに心を込めてキスしたのに。
イルカ先生は頭ン中でどっかの誰かとキスしてたんだ。
なにそれ。
死にたい。