イルカ先生は絶対に俺を嫌ってない。嫌っているはずがない。そして俺達は相当深い仲になっている。チンコを舐めてもドン引きされないくらいだから、イルカ先生にとって俺は特別な存在のはずだ。でも恋人じゃない。イルカ先生を見てれば分かるけど、イルカ先生は全く俺に恋心を抱いていない。その瞳にあるものは上級オナニスト同士としての親しみと、俺個人に向ける信頼、それから友達よりも親友よりも兄弟よりも深い親愛。
強く深い親愛と信頼があるからこそ、イルカ先生は俺の言葉を真に受け俺に言いくるめられるまま手コキをされたりフェラチオをされたりしてる。妙に平気な顔で「気持ち良かったですねー」なんてニコニコしてる。そして俺は自身の汚い欲望など欠片も見せず、「またしよーねー」なんて言葉を平気で吐く。
このままで良いわけがない。このままだと俺は一生イルカ先生に嘘を吐き続けなくちゃならない。その絶大な親愛と信頼を裏切って。
しかしそもそもイルカ先生は何を考えているんだろう。チンコを舐める友人なんてとんでもないと思うぞ? そもそもアレなの? もしかしてイルカ先生は友人に「おいイルカ、今日はお前のチンポ舐めながらシコりたい気分だぜ」って言われたら、「仕方ねーなぁ」なんて言いながらズボン下げちゃうの?
考えてみたらイルカ先生はオナニストに超優しい。里内勤務のオナニストどもが「今日は貧乳ケツマンコ巫女で抜きたい」って言ったらすぐさま調達してくるし、「最近勃起率が悪い。刺激の強いのが欲しい」ってオーダーされれば二つ返事で極上ハードエロを取り揃える。「自慰のことならなんでもお任せ・シコッティイルカ」って店でも開けば確実にひと財産築くことができるだろうほどに。
そんなイルカ先生だから、もしかしたら「チンポ舐めさせて」って言われたら……。
「らめぇええええッ! イルカせんせパンツ脱いじゃらめぇええええ!!」
「お前マジでうるせぇえええええ!!」
サスケが唐突に千鳥を完成させた。のは良いけど、何故か手をチッチと鳴らしながら俺に突っ込んで来る。
なにこの子すっごく迷惑! 人に向けて千鳥放ったら危ないじゃない!
ひょいっと避けるとサスケはそのまま岩に千鳥をぶつけ、大穴を開けた。威力はそこそこ、ま、俺のに比べたら可愛いもんだけどね。
ゼーハーと息を切らせるサスケを放っておいて、俺はまたイルカ先生のことを考える。
しかしこれは本当に忌々しき問題かもしれない。イルカ先生は初フェラ初キッスだったって言ってたけど、イルカ先生のチンコと唇が今まで無事だったのはどう考えても天文学的幸運が途切れることなく重なり続けていただけだ。そうじゃなかったらあんな素敵で可愛くて美しくて優しくてラーメン好きで上級オナニストの人、周囲が放っておくわけがない。天文学的幸運と自慰の女神がイルカ先生を守っていなかったら、あと俺の日頃の行いが悪かったら、イルカ先生は間違いなくチンコしゃぶらせてチンコしゃぶらせてと毎日のように言い寄られているに違いないんだ。
そう、今までは幸運が続いていただけ。でもそれはいつ終わりを迎えるか分からない。
もしかしたら今この時も、イルカ先生の元に誰かが言い寄っているかもしれないんだ。
「逃げてぇええええッ! イルカせんせチンコしゃぶらせちゃだめぇえええええ!!」
「いい加減にしろぉおおおお!!」
サスケが本日二度目の千鳥を成功させた。のは良いけど、やっぱり俺に向かって突っ込んで来る。
なにこの子すっごく迷惑! て言うか何でそんなに怒ってるのか全然分かんない!
いつも虫の居所が悪くてナイフみたいに尖っている思春期真っ只中のサスケの攻撃をひょいと躱し、俺はこの子の食生活から見直すべきなんじゃないだろうかと思った。こんなに短気な子は見たことがない。しかもよく分かんないことでぷりぷり怒ってる。これは、よく食べてよく眠ると言う最も基本的なこともできてないからかもしれない。
サスケはまたもやさっきと同じ岩にぶち当たり、そこに大きな穴を開けた。チャクラを一気に消耗したのでフラフラになって肩で息をしている。しかし一日に二発も撃てれば充分だろう。俺なんて四発でヘロヘロよ? ま、下半身の方はとめどもなく撃てるけどね!
「ま、お前の限界は二発…。こんなところだ」
お前もアレだろ? 下半身の方は限界なくいけちゃうんだろ? 良いねぇ若さって。チンコ痛くなるまでシコシコしても翌朝には朝勃ちついでに何気に一発、みたいな感じだろ? 気にするな、朝勃ちついでの一発は誰でもやることだ。
そんなことを思いつつペラペラと千鳥とチャクラの話をしてやっていたら、「二発以上使おうとすれば、どうなる?」と訊かれた。
「三発目は発動しない…。よく憶えとけ!」
キリっとした顔で俺は言い放つ。
今、かなりカッコ良かった。今俺、かなりカッコ良かった。多分サスケは今日の日記に、「今日のカカシに胸がキュンときた」とか書いちゃうよ。今サスケの中の抱かれたい男ランキングは圧倒的にはたけカカシが一位だよ。でもごめん、俺はイルカ先生一筋なのよね。ごめんね!
それにほら、セックスでも同じことが言えるんだよね。何でも限度ってもんがあるの。そう、もうこれはセックスの回数って思った方が早い。サスケはなかなか面が良いからモテモテで、そろそろ童貞も卒業だろう。だからこそ教えてやる。上忍師として俺はお前に教えてやる。良いかこれは大切な話だ。
「無理に射精しようとすれば…上手く精子は出ず透明なのがチロっと出るだけの上に疲れ切って何だか相手の女への興味も薄れ、ヘタしたらさっさと帰れよなんて本音がぽろり、別れ話に発展する。ヤリすぎてヘトヘトな上に修羅場だ。それがどんなものかお前にも想像つくな? たとえ本音ポロリをしなくても…お前にとって決してロクなことにはならないよ。…特にお前にはな…」
「意味分かんねーし、なげーよ。三行でまとめろ」
「いくら俺がカッコ良くても俺はお前の気持ちに応えらんない。ごめんね!」
「もっと意味分かんねーんだよぉおお」
サスケは涙目になってその場にぐったりと座り込んだ。
とにかくそんな感じでその日のサスケの修行は終わった。本戦まであと二日、間に合わせた俺流石。
「暗部の仕事入っちゃいました」
日が暮れた受付所。任務を終え報告書を出しに来た忍と、夜からの依頼を受けに来た忍でごったがえしている、一日で最も騒がしい時間帯。
そんな中、俺は暗部装束に身を包み長蛇の列に大人しく並び、やっと来た俺の番でイルカ先生にそう言った。別に依頼書貰いに来たわけじゃないよ、暗部の任務は火影から直接貰うもんだから。ただ、イルカ先生に挨拶しに来ただけ。
「帰還予定は?」
「明日の夕方です。イルカせんせが傍にいないと寂しくて俺はきっと泣いちゃいます」
「もう、本当にカカシ先生はさみしんぼなんだから」
楽しくイチャイチャしていると、周囲から「あの髪のせいで暗部面の意味なくね?」とか「カカシじゃまー」とか「うちのスネちゃまの写真見るザマス?」とか聞こえた。これはアレだ。きっと俺とイルカ先生の仲の良さを目の当たりにして羨んでいるんだ。
は!
そう言えばイルカ先生のチンポしゃぶりたいって奴がこの中にいるかもしれない! 何という危機。何という図々しさ。何という卑猥な下心! お天道様が許してもこの俺が許さない!
俺は殺気全開にして振り返り、叫んだ。
「イルカせんせに不埒な真似はさせないよッ!」
俺の殺気で瞬く間に受付にいた忍は壁や天井に張り付いたが攻撃力溢れる俺の牽制に感動してか、すぐにぞろぞろと戻って列を成した。周囲から「もう分かったから早く任務行け」とか「カカシじゃまー」とか「スネちゃまの目元はお爺ちゃまそっくりザマスでしょう?」とか聞こえた。はいはいこれはアレだ。あの殺気……流石天才エリート写輪眼のカカシ、これはうかうかとイルカを誘えないぞ。しかし悔しいから何でもない顔をしていよう。ってそんな作戦だね。はいはいはいはい。
「カカシ先生、どうなされました?」
「なんでもなーいよ」
イルカ先生のチンコを狙う不届き者に牽制しておきました、なんて心の中でえっへんえっへんとなりつつ、テヘっと笑った。デキル男は影で動くものなのですよ。
ああ俺カッコイイ。いつか絶対イルカ先生は俺に恋をすると思うよ!
それから俺はイルカ先生に見送ってもらって任務に出た。まだサスケの千鳥が不安定だからあまり里を離れたくはないんだけど、ちゃっちゃと終わらせてしまえば良い。
任務は木ノ葉の東にある岩山を住処としている野盗の殲滅だった。別に暗部じゃなくても良いじゃんって思ったけど、そいつらは変な薬を作っているらしくその押収も兼ねていて、念の為に暗部だけの構成となった。俺暗部辞めましたけど!って三代目に言ってみたけど「オカマのせいで里の警備を強化してて人手不足だから頑張れ。だから報酬は弾むようで弾まない」って言われた。接続詞の使い方がおかしいと思います!
移動中は暇だったから、久し振りに暗部だらけの隠語大会を開いた。暗部だいすき!
途中でオナニータイムを要求されたので、休憩に入った。どいつもこいつもみんな俺の知ってる有名オナニストで、オナニーには妥協のない奴らだ。暫くするとナイスオナニー!と口ぐちに叫びながらオナニストたちが戻って来る。みな良い顔をしていた。いや暗部面で見えないけど良い顔してるに決まってるの。
また移動を開始する。夜明け前に少し寝て、オナリスト達が朝勃ちオナニーを終了させると更に移動する。
「そう言えば、イザベラが逝ったぜ」
戦地の話をしていると、不意に狸面がそう呟いた。
「イザベラが!?」
驚いて訊き返すと他の暗部達も頷き、みな少しの間沈黙した。
イザベラは俺が暗部から引退する少し前に入荷された、暗部共有空気嫁だった。青髪でショートヘアの可愛い娘で、新品新品と喜んだ新人暗部が鉤爪ですぐに穴を開けやがったんだ。古参暗部がいつものようにガムテープで補強していると、申し訳なく思ったのか穴を開けた新人暗部がその上から包帯を巻いた。すると途端に猛烈な萌えキャラになった。
イザベラは空気嫁の中で一番人気で、すぐに壊してしまうのは勿体ないからと暗部内で緊急会議を行い、イザベラ専用スケジュールまで作られたんだ。
しかし、そのイザベラもついに逝ったのか。
「イザベラは萌えるからな、みんなも興奮して抱くからもうボロボロの状態だった。それでもだましだまし使ってきたんだが……ある日ラリった奴にグチャグチャにされちまって、ガムテープでも補強できねぇ状態になっちまった」
「供養は?」
「勿論した。任務ほっぽりだして供養に参加する奴もいたよ。みんな泣いてた。壊しちまった奴が一番泣いてたし可哀想だったな。もう無理だって言ってんのに、一生懸命膨らませようと空気入れててよ」
胸が痛くなるような話だ。
空気嫁の耐久のなさは異常で、体重を乗せるだけで空気が漏れる。だからこそみんなで出来るだけ優しく使用し、だからこそみんな空気嫁に愛着が沸く。俺達暗部の絆は空気嫁によって繋がると言っても過言ではない。
少ししんみりとした空気になった。
「でもイザベラは愛されてたな。あんなに愛された空気嫁はサンドラ以来じゃねーか」
狸面の言葉に、誰かがぐすんと鼻を鳴らした。
イザベラよ、安らかに眠れ。
俺は祈りを捧げて走る。
野盗の住処に到着したのは予定通りの時間帯だった。ド素人と間抜けそうな抜け忍数人で構成されたその野盗は、去年までは野盗の名に相応しくチンケな盗みを働くただの野盗だったのだが、研究熱心な抜け忍がそこに加わり怪しげな薬を作って今では新薬研究所、くらいにまでグレードアップしているようだった。新薬って言ってもお薬屋さんで買えるようなものじゃないから迷惑なんだけどね。
最近出回っているのはかなり効き目のある興奮剤らしく戦場にも出回りだした。ちょっと何時如何なる時も冷徹冷静であるべき忍が興奮剤ってどーなの?と思うけど、天才エリート忍者である俺にはその辺の凡人忍者の思考はよく分かんない。もしかしたら忍の戦闘は俺の知らないうちに格闘技みたいになったのかもしれない。ちょっと時代の流れに付いて行けないです。
とにかく住処に到着すると、簡単に作戦を確認して俺達はそこに乗り込んだ。
外観からは予想できないくらい中は広く、新薬研究所と言うよりも本当に工場みたいになっていた。元が野盗だった割には儲けてますね、とちょっと感動した。その才能を何故他で発揮しないのかねチミ達は。
しかし警備は大したことがなく、こりゃ三十分もかからず殲滅できるなぁと思っていたら途中で問題が発生した。
そいつらが作っている薬を発見して、俺以外の暗部が泣きだしたのだ。
「これは……まさしく、イザベラを壊した新人暗部が内緒で使った薬」
ええええええ。暗部まで興奮剤ってそれどーなの? なんか俺、今引いた。すっごく引いた。暗部って任務はクールに、オナニーは熱くがモットーじゃないの?
「アイツはこの薬のせいでイザベラを……」
えええええ! だったらこの薬のせいじゃん! イザベラ壊れちゃったのこれのせいじゃん。こいつらのせいじゃん。俺がお世話になったイザベラ!
「イザベラの仇をッ!!」
「うおおおおお!!」
「萌えを返せ! 空気嫁返せ! 戦場の楽しみを返せぇえ!」
「イザベラ返せ! みんなの勃起率返せ! あとイルカせんせだいすきぃ!」
俺達は雄叫びをあげて忍刀を抜いた。
思い知れ! 俺達暗部のオナニーに対する想い! これは俺の怒り、これはイザベラの怒り、そしてこれは謎の丸メガネのそのメガネセンスへの怒りだァアアアアア!