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 サスケの修行を見てやる日々が続いた。
 オカマの大蛇丸と謎の丸メガネが気になるから、俺も同時に修行を続けた。もう単調な崖登りの業はせず、もっと楽しくて変化のある修行をして肉体を暗部時代の頃へと戻していった。例えば一人淫語しりとり。これは結構キツイ修行で、例えば腕立てをしながら「ペッティング……グ、ぐひひ、今日は腰が抜けるまで可愛がってやるぜ……ぜ、ぜんまい仕掛けのバイブ……ブ、ブラジャー……ヤ、や、そんなところクリクリしないでぇっ」なんてブツブツ呟きつつ腕立てしてると、次第に興奮してきて超高速腕立てになるんだ。それどころか腕立てしてたはずなのにいつの間にか立ち上がって超高速マラソンまでしてる。更には「うるせーーんだよぉ!」ってサスケが殴りかかってくる。サスケには集中力ってもんが足りないんじゃないかな。
 そんなこんなで修行を続けていたある日、俺に任務が舞い込んだ。しかも、イルカ先生と一緒。
 任務内容は火の国の大名への密書の受け渡しという至極単純なものだったけど、三代目が俺を使ったってことは結構重要な書簡なんだと思う。写輪眼のカカシですからね、俺。でも上級オナニスト二人を揃えたってことはアレかもしんない。凄く淫らですけべぃな密書なのかもしれない。おお!
 一緒に任務ってことで、イルカ先生は朝から張り切ってお弁当を作ってくれた。凍らせたお茶も作ってくれたし、おやつの駄菓子も用意してくれた。万が一のために、例えば敵に襲われて負傷して帰還が遅れる時なんかのために、オナニーのオカズも持って行きましょうね、なんて気の利いたことまで言ってくれた。
 そんで早朝に出発して、二人でウフフってしながら森の中を走って行って、お昼にはイルカ先生お手製のお弁当を食べた。はい、イルカせんせ、あーん。みたいなことまでした。しちゃった! 勿論イルカ先生も同じことをしてくれた。俺とイルカ先生の仲の良さは、絶対に伝説になるべきだと思う。これはもう木ノ葉の歴史として語り継がれるべきなんだよ。ロングロングアゴゥ、これは固く結ばれた男達の物語、みたいに!
 大名屋敷に到着すると目的の人物に変態的卑猥密書を手渡し、暫く待たれいって言われたので大人しく言われた通りにし、小一時間後くらいに代わりの密書を持たされた。多分これも変態的凌辱じゅぷじゅぷ密書なんだと思う。あまりにもエロいから密書扱いにしてるんだろうな。そうに違いない。このド変態どもめ! 俺も仲間に入れろ!
 変態的凌辱じゅぷじゅぷ密書を手渡されると、俺達は大名屋敷を後にした。もう帰るだけなんてツマンナイなー、もっとイルカ先生と仲良く任務に浸っていたいなーって思ったけど、イルカ先生にはアカデミーがあるし俺にもサスケの修行がある。だらだらしてるとまたサスケに追いかけ回されるから、ちゃんと真っ直ぐ帰ることにした。
 だがしかーし!
 せっかく俺が真面目に寄り道買い食い寄りオナニーもせずに帰ろうとしているのに、現れたんだな。敵が。
「密書を渡してもらおう」
 なんて言いながら、敵は俺とイルカ先生の前に立ちふさがる。どうみてもザコそうな忍に見えるが、数ある密書の中でも、この変態的凌辱じゅぷじゅぷ密書を狙うとは大した奴だ。忍としては中級でもオナニストとしては上級なのかもしれない。
「嫌だと言ったら?」
 イルカ先生が不敵に笑いながら戦闘体勢を整える。
「力尽くで奪うまでだ!」
 敵が手裏剣を放った。が、イルカ先生は美しく華麗にそれを避けた。
 なんて古典的な会話と行動だろう。一種の様式美のようなものまで感じられる。流石イルカ先生だ。それにそのイルカ先生に合わせた敵も素晴らしいではないか。だてに変態的凌辱じゅぷじゅぷ密書を狙った忍ではないということか。と言うことはやはり上級オナニストか。上級オナニストであるならば、きっとこの敵はこれを奪って手淫三昧な日々を送ろうとしているんだ。三代目と大名が秘密でやり取りするくらいの淫猥な文章で手淫三昧、おお!
「手淫三昧! 俺も混ぜろ!」
 悔しくなって叫びながら俺も戦闘に加わってみた。
「カカシ先生、脈絡がちょっと意味不明です!」
 イルカ先生と敵が何だか困惑しながら俺をチラリと見た。
「いやだから、秘密の淫猥文章を独り占めして手淫三昧なんて羨ましすぎるから、俺も混ぜろって意味です!」
「お前は写輪眼のカカシだな……。凄腕の忍らしいが、ちょっと意味分かんないから」 
 困惑しきりな敵にそう言われからもう一回最初から説明しようとしたけど、何故か二人とも相手にしてくれなかった。これはあれか? 仲間外れの術? そういう新しい技なの?
 イルカ先生と敵忍は、しょんぼりしている俺をそっちのけで激しく戦闘を繰り広げている。イルカ先生と互角ってことはあの敵は中忍くらいなのかなぁ。印を結ぶスピードも中の上くらいで、体術は今のサスケよりもちょっと上くらい。火遁の技が多いなぁ。あ、イルカ先生の腕に傷が!
「イルカせんせ、がんばってー!」
 黄色い声で応援すると、にっこり笑って手を振ってくれた。かっわいー!
「俺にも声援を寄こせ!」
 敵忍がむっとして言うので、しぶしぶ「そこそこがんばってー」と低い声で励ましてやった。声援を送るとすることがなくなったので、木の根元に座りこんでそこで膝を抱えてちんまりと観戦する。だって仕方ないよね、俺、仲間外れの術をかけられてるしさ。俺、可哀そうな子だしさ。それにしても仲間外れの術なんてアカデミーの女生徒が繰り出す必殺技みたいな感じだよね。
「お前、やるな」
「お前こそ」
 なになにその会話。なんか楽しそう! 俺もそういうの言ってみたい。
 羨ましいなーって思いながらぼんやりと二人の戦闘を眺めていたら、足元にアリさんの行列を発見した。アリさんは良いよねー。心が和むよねー。でもアリさん観察にもすぐに飽きた。イチャパラでも読もうと思ったけど、そう言えば早く帰ってサスケの修行を見てやらなくちゃならないことを思い出した。二人の息も上がってきた頃だし、そろそろ俺の出番か。
「アンタ、今日のオナニーのオカズなに?」
 声をかけると、敵忍の動きがピタリと止まった。
「俺は今任務中だ。オカズは持って来ていない」
「ああ、妄想派か。だったらイルカ先生の方が強いよ」
「俺の妄想力を侮るなよ。俺は木の股を眺めながらでも、蜜を集める蜂を眺めながらでもオナニーできるツワモノ!」
 そう言って胸を張る敵を見て、俺はイルカ先生の勝利を確信した。木の股を女の股に見立てて妄想するなんてアカデミー生レベル、基本中の基本だし、蜜を集める蜂と花で「ふふ、愛液でベトベトじゃねーか。じゅるじゅるに吸ってやるぜ」なんて妄想を繰り広げるのも戦場ではよくある昼下がりの光景だ。敵は上級オナニストだとばかり思っていたが、どうやら実際は中級より少し上程度。
「イルカ先生、このアリの行列でやっちゃってください!」
 俺が足元を指して叫ぶとイルカ先生はすぐさま俺の元に駆けつけ、足元のアリの行列を眺めながら一気に勝負に出た。
「アリ実! アリ実はどこ!」
 意表を突いたイルカ先生の出だしに敵忍が息を飲む。
「アリ姫はアリゴミの波を掻いくぐり、先日漸く蛹から脱皮した妹のアリ実の名を呼んだ。まったく、手間のかかる妹だわ。今朝喧嘩をした時に、あたし、もうお姉ちゃんの助けなんていらないんだから、なんて言ってたくせに。アリ姫は大きな溜息を吐くと妹のフェロモンを辿り行列から離れて妹の探索に出た。大きな石を迂回して繁みの中に入って行くと、枯葉の下で蹲っているアリ実を発見する。アリ実、探したわよ。うわーん、おねーちゃーん! 馬鹿な子ね、迷子になったからってこんなところに隠れて。ごめんなさいっ! でもアリ実、きっとお姉ちゃんが助けに来てくれるって信じてたんだ。もう、帰ったらお仕置きだからね。お、お仕置き、いやぁ……。馬鹿おっしゃい、あんたみたいな馬鹿な妹は毎日巣のみんなにグチュグチュになるまで犯されるくらいが丁度良いのよ。昨日だって嫌がってたくせにすぐに自分から尻を上げて、アソコからはしたない液を一杯垂れ流してたじゃないの。そんなことないもん! いやらしい子ね、昨日は何回イったの? イってないもん! ウフフ、嘘吐きはその場でお仕置きよ。アリ姫の指がアリ実の蜜壷に挿入される。そこは昨日の淫らな饗宴を思い出したアリ実の愛液によって既にたっぷりと濡れていた。いやぁああ! 何が嫌なの? 期待してこんなに濡れてるくせに。嬉しくて触角がぴくぴくしちゃってるじゃないの。さぁ今日はここに何を挿れて遊ぼうかしらね。巣の倉庫にある色んなものをお腹一杯詰め込んで、みんなで遊んであげるからね。アリ姫の容赦ない指の動きにアリ実は、」
 そこでイルカ先生はピタリと口を閉じた。
 敵忍の顔に絶望がよぎる。
「つ、続きを……」
 懇願するようにそう呻いた敵忍の股間は既にはちきれんばかりだった。ま、俺も同じですけど。ほっこりエロ、しかもちょっと感動系かと思いきや、実は鬼畜で攻めるとは流石イルカ先生だ。
「アリ実はどんな辱めを受けるのだ!」
 涙目の敵忍は、縋るようにイルカ先生に続きをせがむ。
「お前もオナニストなら続きは自分の妄想で補足しろ。本能の赴くまま煩悩を解き放ち、思う存分シコれば良い」
 キリっとした顔をしてそう告げた。
 勝負あった。こんな鮮やかな勝利はなかなかお目にかかれない。
 俺は立ち上がり、どこか自慢気な気分でイルカ先生の手を取ってその場を去った。


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