天才で良かった。ほんと、天才で良かった。有難う、父さん、四代目。
あと、写輪眼持ってて良かった。ほんと、持ってて良かった写輪眼。有難う、オビト、リン。
「カカシ、塩ラーメンの準備は整った。味見を」
差し出された小皿を受け取り、口を付ける。俺があれこれ指図した通りに作ってくれたおかげで、それは完璧に一楽の塩ラーメンの味だった。のっけられたネギは敵方の畑で栽培していたもので文句などあろうはずもなく、メンマはこっそり一楽から拝借してきたものだから問題なく、木ノ葉隊自家製チャーシューもなかなかいける。豚を担いで来た甲斐があったってものだ。
「しょうゆは?」
「もうちょっとだ」
「味噌の方はどうだ」
「コチラももうすぐできる」
「トンコツの方は?」
「こっちはもうちょっと時間かかるな」
いつもは激しい攻防が繰り広げられる戦場で、俺達上忍と暗部は割烹着を着て動き回っていた。下忍中忍達には何も言っていないので、これはクリスマス・イブに相応しいサプライズパーティになるだろう。ラーメンパーティだが、問題ないはず。むしろはんぺいたは泣いて喜ぶはず。そして俺のほっぺにチューをするはず。写輪眼全開でチャクラを消費しまくった俺に感謝のチューを!
いや、もしかしたらそれ以上のことだってしてくれるかもしれない。例えばほっぺじゃなくて違うところにチューとか、うっとりと俺を見上げて頬を赤らめて、貴方がかの有名なコピー忍者のはたけカカシ上忍なんですか? 俺、ずっと憧れてたんです。今日は俺のために一楽のラーメンを食べさせてくれて有難うございます。あの、俺、何もできないけど、せめて……。駄目だよはんぺいた、そんな、そんな、駄目だって! わっ、服とか脱いでなにするつもりなの! え? そんな破廉恥なことを言うもんじゃありません。俺は紳士だから、君みたいな子供にそんな、え?もう子供じゃない?いやいや君はまだそんな。ちょ、ちょっと待ちなさい!
「カカシ、何故勃起してる?」
「ぼぼぼぼぼぼぼ勃起なんてしてないでしょ! そんな子供相手に勃起とかするわけないでしょ!」
「若干膨らんでおるようだが」
「俺の股間は常にこのサイズなの! 思わずむしゃぶりつきたくなるようなサイズなの! いつも!」
とても失礼なことを言う兎面に背中を向け、破裂しそうな心臓の上に手を置いて深呼吸する。違う。俺は断じて変態ではない。少年に欲情するような趣味はもっていないぞ。大丈夫、ちょっと最近溜まってるから下半身が何かひょんな勘違いをしただけなの。それに豚と食材を担いでずっと走って来たからとても疲れてて、ほら、そういう時って勃起するじゃない? 疲れマラってヤツよ。だから俺はとにかく断じてはんぺいたの裸体とかそんな。
「止めてよね! そういうふうにはんぺいたの裸体とか想像するの止めてよね!」
「俺はそんなもの想像していない。それよりもそのはんぺいただが、手に負えなくなってきたぞ。ラーメンの匂いを嗅ぎつけてハイエナのようにこの周囲をうろつきまわっている。今のところ暗部が必死で止めているが、そう長くはもたんだろう」
「当たり前でしょ、ラーメンがかかっている時のはんぺいたは無敵だもん。内臓ぶちまけても啖呵切るはんぺいたを暗部如きが止められるわけないもん。俺のはんぺいたは無敵! さすがはんぺいた! 俺のはんぺいた! 暗部ざまぁみろ!」
「落ち着けカカシ、お前も暗部だ。そしてはんぺいたを賞賛している暇はない」
そう言えばそうだった。まだトンコツスープができていないのにはんぺいたがここに来てはいけない。はんぺいたが「今日はトンコツの気分だぜ」なんて言い出したら困るもんね。
「じゃあ俺が行って相手をしてくるよ。はんぺいたを抱っこしてないの俺だけだし」
「抱っこは関係ない」
あれ? 関係ないっけ? ま、良いや。とにかく俺が。
抱っこしてあやす役になる!
俺が天才なのは生まれ持ってのもので、天才だから抜け目とかも全然なくって、天才だから豚さん一頭、ラーメンの食材の他にサンタの衣装も持って来ていたりする。だからそれに着替えてそそくさとはんぺいたの元に向かった。暗部面を外した今宵の俺はサンタクロース。髭はないし無駄にカッコイイけど、そういうサンタもいたって良いよね。むしろ歓迎されるよね。ほっぺにチューは確定ですよね!
と、思っていたのに。
そこはまるで戦場だった……。
いやここ戦場ですけどね! そういう意味じゃなくてね!
はんぺいたはあたかも歴戦の忍のような目付きでキリリと対峙している暗部を睨みつけていたし、暗部は暗部ではんぺいたに対し殺気めいたものを当てていた。まさに一触即発、張り詰めた空気が12月の夜の野原を凍らせている。
「カカシ……この子は一体」
サンタの登場に気付いた暗部がコソっと俺に耳打ちする。
「俺のだよ。俺の子」
「いくつの時に作った? お前、すげーな。精通いくつで来たのよ」
「いやそうじゃなくて、俺のはんぺいたなの」
一瞬物凄い尊敬の眼差しを向けられたから、ちょっと困惑した。そりゃ俺は6歳で中忍になった反則的な天才だけど、だからって俺のタマキンはそんな反則的な精子早期製造をしていない。むしろその頃のタマキンは稼働もしていない。今はフル稼働ですけどね!
「一楽の匂いがするぞッ!」
鼻を蠢かしてはんぺいたが叫んだ。
く、さすが俺のはんぺいた。ただのラーメンではないことを既に察知したか。
「はんぺいた、話を聞いて」
「一楽がここに出店しているのかッ!」
「話を聞いて」
「一楽のテウチさんには弟子はいなかったはず。のれん分けのはずがないぞッ!」
はんぺいたはギリギリと歯ぎしりをしながらホルスターからクナイを取り出した。すごくかっこいい。俺のはんぺいたは凄くデキル忍になると思う。もしかしたら上忍になれるかもしれない。
本当に素質がある。ただしラーメン関係に限り!
「邪魔をすると言うならば力尽くで排除する……」
暗部に向かって力尽くで排除するという言葉を吐ける下忍が一体この世に何人いるのだろうか。しかもはんぺいたのこの殺気、半端ない。彼のラーメンに懸ける情熱を全て注いだような本物の殺気、まるで数多の修羅場をくぐり抜け数多の屍を越えてきた屈強の戦士の醸す殺気。今までそれほど苦難を乗り越えラーメンを食べてきたというわけか。はんぺいた、大した奴だ……。
しかし俺とて負けてはいない。襲いかかってくるはんぺいたの怒涛の攻撃をヒラヒラと躱し、サプライズパーティ会場から徐々に離していく作戦に出た。はんぺいたは「必殺秘術・割り箸の舞」とか「チャーシューが端っこの小さいところになるのろい」とか「ラーメン雑誌の角攻撃」とか色々仕掛けてきたけれど、自分の技に夢中になりすぎていて俺の作戦には気付かなかった。
「つーかまーえたー」
隙を見てはんぺいたを後ろから抱き締める。じゃなくて拘束する。
「くっ、卑怯だぞ! 正々堂々と戦え!」
チャーシューが端っこの小さいところになるのろいは正々堂々とした攻撃なのだろうか、と一瞬真剣に考え込みそうになったけど、まぁそれは置いといて俺はここぞとばかりにはんぺいたを抱っこする。
初抱っこ! 俺もついにはんぺいたを抱っこ!
頬擦りしたら顔を引っ掻かれた。でも可愛い。ちっちゃな仔猫がミーミー言いながら暴れてるみたいで可愛い。もっと頬擦りしたらビンタされた。いやでも可愛い。元気な仔犬がキャンキャン言いながら暴れてるみたいで可愛い。だから更に頬擦りしたら額が割れるほど頭突きされた。しかし変わらず可愛い!! 男の子はこれくらい腕白な方が良い決まっている!!
たまらん! はんぺいたたまらん! 辛抱たまらん!
「なんかコイツ変だーー!」
変じゃない、天才だ。
「なんかコイツ鼻息荒いーー!」
はんぺいたかわいいよ、はんぺいたかわいいよ! もうほっぺにチューなんてどうだって良い。むしろ俺がチューしてやる! チューって言うか舐めまわしてやる! んーーーっ!
「へ、変態! 誰かちょ、ちょ、だすげでぇええええーーーーーー…え?」
「え?」
ペロペロというかむしろベロベロしていた俺がその声につられて顔を上げると、はんぺいたはキョトンとした顔で言った。
「なんかお前の口から、一楽の匂いがする」
こ。
……こ。
………………こ、ここここ、これは………ちゅーフラグ?
「か、か、確認してみる?」
待て俺。ちょっと待て。声が裏返ったとかそんなアレはどうでも良いけどちょっと待て。良いのか、本当に良いのかそれで良いのかもう知らないぞどうなっても知らないぞ! だってお前そんなことしたらチンコがなんかもう…っておま、ちょ、既におま、そのチンコ!
いやいやチミ、何を勘違いしているのかね? 僕のチンコは常にこのサイズよ? 常に若干膨らんでいるのが天才忍者はたけカカシのチンコクオリティ。いつでもどこでもどこにでも挿入できるよう、目的意識は誰よりも高く凛々しく若干隆起して臨戦態勢を崩さない孤高のチンコよ。ハッハッハ。
いやいや違うからそれ! 若干膨らんでるとか言う問題じゃないからそれ! むしろ物凄い勢いでパツンパツンになってんじゃん! お前まさかこんな無垢なラーメン好きのはんぺいたを、大人の邪な白くドロリとした液体に関連する対象として見ているわけではあるまいな!
ち、ちげーよ! 馬鹿言ってんじゃねーよ! だからこれは、アレだよ! 馬鹿! テメーこそそんな目ではんぺいたを見てんじゃねーよ! 俺のチンコはだから、疲れマラってヤツで、とにかくはんぺいたは関係ねーよ!
「どうやって確認すんの?」
「ん。味見してみてさ」
「どうやって?」
落ち着け俺、これは味見させるだけだって。とりあえずチンコのことは置いとこーよ。
そうだな。俺も賛成だ。
「こうやって」
キョトンとしているはんぺいたに、俺はゆっくりを顔を近付ける。
緊張と興奮で動悸が止まらず、はんぺいたを抱えている両腕も小さく震えていた。
唇が触れる寸前で俺は目を閉じる。
はんぺいた。ああ、俺のはんぺいた。
その柔らかい唇に触れると、はんぺいたは「はふぇ?」という間抜けな声を出したが、俺は構わず口付けを深くする。痺れるような口付けとは正にこのことだと思った。触れるだけで電流が走るような。
舌を差し出すと彼は大層驚いたが、しかしすぐに乳飲み子のように夢中になってそれを吸い始めた。彼の口内はとても熱くて柔らかい。俺も彼の唾液が飲みたい。飲み干したい。それから彼の全身に口付けをし、彼に恥ずかしい格好をさせてあんなことやこんなことまでしてみたい。あんなところだって舐めてみたい。恥ずかしげにヒクつくそこに指を入れて彼を導いて、彼のアレを飲み込んで、それからもっと変態的で淫らなことをこの穢れなき彼にして、もうそりゃあれこれあれこれ盛りだくさん、はい、妄想そこまで。俺、妄想そこまでよ。ちょっと洒落になんないよ今の俺。あとマジでチンコがやばいよ!
唇を離すと、彼はキリっとした顔で俺の顔を覗き込んでいた。
「間違いなく、この味は一楽のラーメン、塩味ッ!」
YES! ソムリエはんぺいた!
もっと俺のベロチュパチュパして!
「どういうことだ? やっぱりテウチさんが来てんの?」
「教えてあげるから、ちょっと服を脱ごう」
「服? 服って何か関係あんの?」
「ある! 服を脱がないと始まらない! 一楽も俺も!」
はんぺいたはそう断言する俺を見て、力強く頷いた。一楽に関係あることであればはんぺいたは何だってする!
ちょっと待て俺、そんなことして良いと思っているのか! 一楽をネタにしてはんぺいたに良からぬことをするつもりか! このラーメン好きな少年に、お前は、お前ってヤツは!
黙れ黙れ黙れ! お前だってはんぺいたの乳首舐めたくて仕方ないくせに!
お、俺はそんな!
知ってるぞ! お前が何をしたいか。お前ははんぺいたの裸体を写輪眼全開にしてコピーしたくて仕方ないんだろ? 彼の乳首もうなじも陰毛もチンコもその奥も、何もかもコピーしてその目に焼き付けながら彼をネロネロと舐めまわしたいんだろ! 彼が射精するその瞬間まで、物凄い勢いでぐるんぐるん写輪眼回す気満々のくせに!
違う違う! 俺はそんな人間じゃない!
素直になれよ……。ていうか、服脱ぎ始めてるはんぺいたを思いっきり写輪眼でコピーしてるじゃん、お前。今、既に。
「これで良い?」
「ん、全部脱ごうか。俺、手伝ってあげるからね?」
はぁはぁ。はんぺいたの全裸はぁはぁ。
彼のズボンに手をかけたところで。
俺はとてつもない衝撃に襲われ、目の前が真っ白になった。