何をどうやっても俺は男を殺すことができなかった。男は帰宅するや否や俺が部屋にトラップを仕掛けていないかチェックするのが常となったし、真っ向から挑んでも当然殺すなんて不可能で、情けないことに俺は一度たりとも男に傷を負わせられなかった。悔し紛れにありったけの罵詈雑言を吐き、ねじ伏せられてもお前なんか死ね、死ね、死ねとうわ言のように繰り返し、しかしそうやって呪いの言葉を投げつけることしかできない自分の不甲斐なさに憎悪だけが増大していく。
男は不思議と俺に暴力を振るわなくなった。あまりにも惨めな俺に呆れ果てたのか憐れんだのか、俺が誅殺を企てても暴力は振るわない。ただ、底のない深い影と燃え盛る憎悪によって何かを損なってしまったような、そんな狂人の笑みを浮かべて俺を犯すだけだ。薬を使い、俺を堕落させて愉しむだけだ。
薬は何度も使われた。依存性のある薬だったらしく、忍として一般人より薬の耐性がある俺にもその症状は現れた。男が任務に出て家を長く空けている時などは身体が辛くて仕方なく、自慰をしても物足りなくて薬を求め家の中を掻き回したこともあるくらいだった。そして、そんな俺の状態を知っている男は帰って来るとまず俺で遊ぶ。裸に剥いて下品で卑猥な格好をさせ、俺の身体を弄りまくる。尻を嬲りながら俺の全身をねぶりまわす。貪るように舐め尽くす。俺が自ら犯してくださいと懇願するまでそうして遊ぶのだ。
男は俺が薬を求めている時は決してそれを使わず、嫌がると面白がって使った。そして俺はそんなふうに男に玩具にされ続け、尻だけで射精するのが当たり前になった。性器で前立腺を抉られると自然に嬌声が漏れるどころか、奥まで挿入するだけでだらだらとみっともなく射精してしまうこともあった。
授業に身が入らず、男を殺す妄想だけで一日が終わることが多くなった。
あの男を殺したい。どうしても殺したい。俺をここまで貶めたあの男を、どうしてもこの手で殺したい。捻り殺してやりたい。
物理攻撃が駄目なら、毒殺か。
暗部あがりのあの男を毒殺するには余程の劇薬じゃないと駄目だ。しかもあの男は鼻が利く。だから無色透明、無味無臭、僅か一滴口にするだけで奴を死に至らしめるような、そんな毒じゃないと。
でもそんな毒がそうそう転がっているわけもなく、薬物の管理に厳しい木ノ葉で内勤の俺がそれを手に入れるのはまず無理だった。何かツテでもあれば良いのだが、毒物を扱う部署には知り合いがいない。しかし俺は諦めず、自分で毒を作ることにした。
アカデミーにいる時はその手の書物を手放さなかった。俺でも手にできる毒で最も強いものは死の森に生息するある蛙の毒なのだが、それは強烈な刺激臭がすることでも有名だ。次に強い毒性を持つのは木ノ葉から少し離れた山腹に群生するある花の根なのだが、それは少し口にするだけで口内に痺れが起こる。飲み込む前に気付かれたら終わりだ。次はある蜘蛛の毒だが、これは生息地域が特別保護区となっているので立ち入ることができない。いくら調べても入手可能な、高い致死率と即効性を持つ毒物はほとんど見つけられなかった。
でも殺したい。俺はあの男を殺したい。
執念で探し当てた毒は、とても身近にあった。火の国、しかも木ノ葉の下水に多く生息しているというズイ貝。この貝の毒はとても強力だが、毒の構造がよく分かっておらず抗毒血清がまだ作られていない。抗毒血清が作られていないと言うことは耐毒訓練にも使われていないと言うことだし、それにこれは比較的簡単に捕獲できる。
俺は早速ズイ貝を探しに下水に降りた。生徒達には自習しておけと言い渡してアカデミーを抜け出し、その貝を懸命に探した。そして見付けるとそれを持ってアカデミーに戻り、死なせないように水に浸して長い時間をかけて毒だけを抽出した。
その間も俺は男に好いように玩具にされ続けた。俺の肉体は男の性器に夢中になっていて、男が勃起しているのを見るだけで尻の奥が疼くまでになっていた。
俺はどんどん駄目になっていく。早く男を殺したい。
季節はいつしか秋になり、男の前で激しいオナニーショーをしたり男の性器欲しさに自分の尻の穴を両手の指で開いて強請ったりしている間に、冬が来た。冬になっても俺は家にいる間は全裸で、男に命じられるまま何でもしてみせた。
俺が寒がると男は時々とても優しくしてくれる。毛布を持ってきて身体を包んでくれることもあったし、身体を擦ってくれることもある。チャクラで温めてくれることすらあった。それでも服を着ることは許されなかったし、俺も家では裸でいるのが当然のようになってきていた。俺は全裸で、男が毛布で俺を包みながら俺の身体で遊ぶことが当然のようになってきていた。奥から温まろうね、と尻に指を挿入されて射精しないままいつまでもだらだらと遊ばれるのが当然のように。
男は狂ってる。
優しくしてくれたりもするけど、狂人の目のままだ。
早くしないと俺はどんどん駄目になる。
初雪が降った日、毒が完成した。何度もテストをしたし、匂いもない完璧なものに仕上がった。
俺は飛ぶように走って帰宅し、豪華な食事を作る。その中で、男の好物である茄子の味噌汁の中に毒を混入した。
「ただいま」
男が帰宅する。扉を開けて部屋に入ってくる。
「おかえりなさい」
そう言うのは特に不自然でもなくなっていた。いつからか俺は自然とそう言うようになっていた。男が帰ると、おかえりなさいと。
男がやって来て、料理を作る俺の肩に顎を乗せる。
「美味しそうだねぇ」
「美味しいに決まってます。だって俺の手料理だし」
男が楽しそうに笑うので、俺も笑った。するすると腕が伸びてきて俺の腹から胸を弄り、男は俺の項をねっとり舐め上げながら乳首を指で挟んでツンと引っ張り上げる。それだけでじわりと熱が広がった。引っ張ったまま男は俺の乳首を指で潰す。また熱が広がる。
ヤるならヤれば良い、どっちにしろメシは喰うのだから。
「ごはんは?」
「んー。先」
だから、どっちが先ですかと笑って問うと、ごはんが先と言われた。それでも男は指を離さない。肩に顎を乗せたまま摘まんだり捻ったりして遊んでいる。俺の乳首はとっくに開発されていて、そこを弄られるだけで射精寸前まで昂るようになっていた。
邪魔しないでくださいよと甘ったるい声を出すと、男はもっと弄ってきた。徐々に性器が膨らんできて息も上がって来る。指の腹で円を描くように撫でられ続けていると先走りが垂れる。このままここでヤって、それからメシでも良い。身体の奥が熱を持ち、俺にそう囁く。まずはヤっちまおうと、あの逞しいペニスを挿入してもらって奥を突き荒らしてもらうのを先にしようと、お前もあそこにあのペニスを思いっきり咥えたいだろう?と誘惑する。
「ごはんー」
ぱっと手を離して男がおどけた声を出した。
俺は苦笑する。早くこの男を殺さないと、本当に俺は駄目になってしまう。
その後、男は大人しくなったので俺は食事の支度を無事に済ますことができた。料理を皿に盛り、ビールを出して箸と一緒に男の前に並べる。男は機嫌良くそれらを食べていく。
「今日、初雪降ったでしょ? あれやった?」
「どれですか?」
怪しまれないように俺も料理に手をつける。味噌汁さえ飲まなければ問題ないし、いざとなったら俺もそれを飲んで良い。男がそれに口につけるのであれば何だってしてやる。
「ほら、毎年初雪が降ると生徒達と遊ぶって言ってたじゃないの」
「よく覚えてますね。勿論今日もやりました」
会話が弾む。男は狂っているとは思えないくらい普通の人間のように喋る。支離滅裂なことなんて口走らないし、そういった行動もとらない。
今年はどの子がどうだった、誰がどうだった、去年と比べてあの子達はこんなことをするようになった、こんなことを考えるようになった。そういったことを俺は男に語って聞かせる。男は俺の話を聞きながらメシを食いビールを飲み、少し休憩を挟んで。
「ごはん」
そう言った。
「茄子の味噌汁ありますよ。食べるでしょう?」
と、俺は言う。
「うん、勿論」
と、男は言う。
俺は立ち上がり、まずごはんをよそう。ふっくらと炊きあがったごはんは美味そうな湯気が立ち、とてもツヤツヤしていた。この日のために俺が用意したいつもよりも良い米だからか、見た目も香りも凄く良い気がする。それからお椀に味噌汁を入れる。男がすぐに箸をつけやすいように茄子をたんまりと入れた。これもこの日のために俺が用意したいつもより良い味噌を使ったものだから香りがとても良い。茄子も崩れてないし、完璧だ。
それに毒の匂いもしない。
「どうぞ」
男にそれを渡し、自分の分もよそって俺は席に着く。
男は俺が何度も妄想した通り、まず味噌汁の椀を手にしてそれに口をつけた。そして躊躇なくそれを口に入れ、嚥下――した。
「うん、美味しい」
男がニッコリと笑う。
やっと殺せる。この男を殺せる。早く死ね、今すぐ死ね、のたうちまわって死ね!
「ああ、毒か」
ふとそう呟き、男が何でもないように立ち上がった。何でバレたのか分からないけれど、とにかく口にした。嚥下した。早く毒がまわれば俺の勝ちだ。その毒には抗毒血清がない。早く死ね!
男は口元に笑みを浮かべたままシンクの方に行き、そこで口に指を突っ込んで嘔吐した。嘔吐しては水を飲み、また胃のものを吐きだす。それを繰り返す。汚い嘔吐の音と独特の臭いがして、俺は何故か酷く焦る。そうだ、今ここで後ろから刺し殺せば良い。どこかにクナイ、いやそれを探す暇があれば、そうだ、このビール瓶で頭をカチ割れば、いや、首を絞め、ああ、何でも良いから早く殺さないとこの男を早く殺さないと!
「ズイ貝の毒かな。前に喰らったことがある」
男は一通り嘔吐し終えると、口に付いた水滴を手の甲で拭いながら俺に向き直りそう言った。
「俺ね、なーんか毒に縁があるんだよね。妙な毒を一杯喰らってきた。おかげでこの身体には並大抵の毒は効かない。これはよく濃縮してあるね。自分で作ったの?」
その目にあるのは真っ暗な闇。絶対零度の闇。そこで轟々と燃え盛る凄まじい憎悪の炎。俺が憎くて憎くて仕方ないと絶叫している荒れ狂う憎悪の炎。
その顔に浮かぶのは、怖いくらい大きく吊り上がった唇と、糸のように細く弓のように曲がる目の、狂人の笑み。
「おマエは毒にやられ過ぎてアタマまでおかしくなったんだ。オレが……おれがコろしてやるからおとなしくしてろお!」
何か、何かコイツを殺すものを、何でも良い、そうだ、包丁、いや、もっと大きな武器。大きくて強くてこの男をあっという間に殺せるような、何かそういうもの。何だろう。そうだ、ギロチンみたいなので首を切り離してやれば良いんじゃないかな。この男もそれだったら死ぬに決まってるから。そういうもの、とにかくコイツの息の根を完全に止めることができる、そういうもの。
「そっかー。最近ずっとアレやってなかったもんね。薬使って二人がかりで一杯するの」
「うん、イルカ先生は素直じゃないからね。ヤって欲しくて仕方なかったのに言えなかったから、こんなことしちゃったんだよね」
「可愛いねぇ」
「うん、可愛いねぇ。今日は一杯可愛がってあげないとね」
いつの間にか現れたもう一人の男に抱えられ、俺は寝室に連れて行かれる。
狂った夜が始まった。
最初に二発、どちらが影でどちらが本体かもう分からないが、とにかく一人ずつ入れ替わり俺の中で射精した。暴れる俺を後ろ手にして縛り、たっぷりと腹の中に注いだ。
それが終わると一人が俺を後ろから抱えた。男は胡坐をかき、俺の足を大きく広げて膝の下に腕を入れて持ち上げて自分の足の上に座らせる。胸に足が付くくらい身体を二つに折り曲げられ、もう一人の男からは俺の性器も尻も丸見えになった。そしてその状態で男は俺の尻に薬を塗り込める。
「ぜーんぶ丸見え」
楽しそうに男が言う。
「一杯見て貰えて良いねぇ」
背後の男が耳元で囁いてくる。
「すぐに漏らしちゃダメだよ。面白くないからね。ねぇ、乳首触ってあげれば?」
「俺足持ってるから無理、お前が触ってあげてよ」
「だって俺、イルカ先生のお尻見たいもん」
「もう一人影分身出せば? 乳首用」
「いーね。そうしよ」
二人が喋っている間も薬が内部に浸透していき、燃えるように身体が熱くなる。ハァハァとケダモノのように息が荒くなって、汗が滲んでくる。そして内部が、あそこが酷く疼く。
現れた三人目に乳首を摘ままれると、それだけで射精しそうになった。ボタボタと先走りが溢れだして全身が戦慄く。どろどろと何もかもが蕩けてしまいそうになる。早く、指が欲しい。指だけじゃなくて。
「あああ!」
窮屈な体勢のまま仰け反った。乳首を弄られる度に熱が、からだを、かけめぐって。
「イルカ先生は強く摘ままれて軽く捻られるのが大好きだよね」
後ろの男が耳元で囁く。
「大好きだよねー、いっつもそれで腰をくねらせるもん。あとは乳首を扱かれるのも好きだよね」
「こんなちっちゃい乳首なのに、凄く感度良いよね。かわいー」
乳首の刺激が腹の奥の方まで行って性器が震える。早く出したいと震える。乳首を扱かれるのは大好きだ。性器を扱かれるのと同じくらい好きだ。潰されて捻られて撫で回されるのが大好き。お尻を指でずっと弄られ続けるのもだいすき。おもちゃみたいに色々いじられるのだいすき。
「ああ、全部ヒクついてる。ペニスも睾丸も会陰も肛門も、すごい。可愛いよ」
視姦している男がはしゃいだ声で。
駄目。もう。欲しい。熱い。早く欲しい。そこにつっこんでほしい。
「足も凄い。ブルブルして可愛いよ」
可愛いと耳元で囁かれると足が大きくヒクつく。乳首に軽く爪を立てられ全身に電流が走る。
「あ、溢れてきた! かわいい! 乳首もっと弄ってあげて」
こぷりと生温かいものが溢れて尻の間を流れていくのが分かる。もう、良いはずだ。これでもう。早く、欲しい。もう。お尻に。お願いだから。もうあたまがおかしくなる。中をぐちゃぐちゃにしてよはやく。乳首もっと触っていじめてよもっと。キモチイからもっと、キモチイイからすごくキモチイイから。
「イルカ先生可愛い。涎垂らしてる」
「ほんとだ、かわいー。こっちも一杯涎垂れてる。ドボドボ出てくる。すっごいかわいい」
「指、挿れてあげなよ」
挿れて!挿れて!挿れて! 指、挿れて!
「あ、あ、あ、あああっ!」
指が。
キモチイイ。もう駄目だ。もう。あそこ触ってよ、あそこ、いっぱいシテよ!
「イルカ先生泣いてる。可愛い」
「色んなものでぐちゃぐちゃ。指だけでイくねこれ」
「勿体ないよ。紐で縛ってあげたら?」
「や! いや! イク、イク!」
身体が勝手に暴れる。その度に尻にある指に中を激しく掻き混ぜられるようで、暴れるのが止められない。キモチイイ。もっとしてくれないと死んでしまう。もっと見てもっと弄ってもっとちゃんとしてくれないと、しんでしまう。あたまがおかしくなる。お尻に挿れて、ほしい。
「上手におねだりできたら、ご褒美に挿入してあげるからね。頑張ってね」
乳首をぎゅっと抓られてまた身体が跳ねる。中のイイところを擦られて射精しそうになると根元を指で締め付けられる。でも指はそこを触る。乳首もあそこもぐりぐりと苛めるみたいにいっぱいさわる。乳首いっぱい捏ねられてあそこいっぱいぐりぐりされてあたまがおかしくなる。おねだり。しないと。
「ん、んーっ…あ、ゃあ……い、挿れて挿れてっ…挿れて!」
「なにを?」
「ペニス、ペニス欲しい……咥える、お尻に…おっきいペニス、ギツギツに、思いっきり頬張る!」
お尻でペニスを貪る。お尻でしゃぶる。ペニス欲しい。乳首も触ってもっと。つよくひねって、ひっぱって。おしり挿れて。咥えたい。早くいっぱいくわえたい。
「あ、早く、咥え……あ、お尻に咥えたい!お尻でしゃぶりたい!」
早く苛めて。嬲って。その大きいので中を一杯にして揺さぶって精子一杯出させて。奥まで全部嬲り倒して。
「すっごいかわいい。イルカせんせい、さいこうにかわいい」
ごほうび、はやく。もっというから。