「イルカー、おはよー」
「ナツ、おはよう!」
 一日の始まりは清々しい挨拶からに相違ないったら相違ない。
「今朝さー、北地区にカップラーメンが降って来たって話、知ってるかー?」
「聞いた聞いた。ついでに熱湯が降って来ればあとは三分待つだけだったな」
 俺は鞄を下ろして椅子に座り、ナツの与太話に付き合いながら今朝の新聞を読む。なになに? コハル様の曾孫が無事誕生、元気な女の子か。おお、良かった良かった。ふむ、里の結界が昨日から回復か。良いニュースだ。あとは砂の里から救援物資がまた届いたか。む、この隊長の顔には見覚えがあるぞ。中忍試験の時に支給の弁当に関して少し話をしたな。良い奴だったから今度一楽を奢ってやろう。その他もむつかしい話以外は隅々まで目を通すぜ。
「それからさ、一部の上忍達に不穏な動きがあるって話、知ってるかー?」
「なんだよ不穏な動きって」
 ヤマブシの呪いを解くためにカカシさんが動いてるとか? なるほど、カカシさんが無事イルカ先生のアソコにインするためにと、上忍達が悪の組織ヤマブシを追っているんだな。いやヤマブシは組織じゃなくて個人だ、早まるな!
「今の里の混乱に乗じて、三代目が保管していた禁術を盗もうとしてるって噂。火影邸の地下倉庫が狙われてるっぽい」
 新聞から視線を上げてナツに向ける。
「マジ? それ、やばくね?」
「本当ならヤバイと思う。単なる噂だから何とも言えないけど。でも木ノ葉はまだ万全な態勢とは程遠い。この機を狙って不穏分子が動きだすのはあり得る」
 確かに木ノ葉はまだ万全じゃないし、人手が足りなくて警備も手薄くなっている。そういう悪い奴等が行動を起こすなら今しかない。これは本当にマズイかも……って、待て待て。木ノ葉に不穏分子なんていたっけ? そもそも動くの遅くないか? やるなら木ノ葉崩し直後じゃないと意味ないだろ? まだまだだなぁ、アカデミーからやり直したまえ!
 しかし、ナツは「飴ちゃんが降って来た」とか「靴下が降って来た」とかちょくちょく変なことを言うけど、この状態の木ノ葉で無闇に流説を流す危険性が分からないほど馬鹿じゃない。ナツはアカデミー教師の中で最も頭が切れるのだ。と言うことは、ナツなりに何か掴んでいるのかもしれない。
「カカシさんに伝えておく」
 声を潜めてそう言った。ナツが俺にそれを伝えたということは、そういうことなのだ。
「宜しく」
 ナツも声を潜めてそう答えた。
 その日は俺の苦手な幻術の授業だったので「スマン。君達のイルカ先生は幻術が苦手なんだ」と最初に謝罪して、授業は全部コムロウに任せた。やることがなくて暇だったので俺はコムロウの席に座り、張り切って授業を聞く。勿論挙手をして質問もした。
 途中でちょっとむつかしいところがあったので、隣の席の木ノ葉丸に「お前、今のところ分かった? 俺、チンプンカンプンのスカンプン」って話しかけてみたけれど、木ノ葉丸は少し笑って「イルカ先生は情けないなコレ」って呟いただけだった。木ノ葉丸はまだ元気がない。他の子はどんどん元気になっていくのに、木ノ葉丸はまだ三代目について気持ちの整理ができてない。どうにかしなくちゃいけないな。
 あと、昼飯にカップラーメンを食べている子が沢山いた。カップラーメンは俺も大好きだけど成長期にそんなもんばっか喰ってたらイカン。これもどうにかしなくちゃいけないな。
 アカデミーが終わるとヤマブシの所に行ったけど、三度のメシよりエロゲ好き、いや三度のメシとエロゲ好きで任務大嫌いのヤマブシは今日も家にいなかった。どうなっているんだろう、明日は雪とか槍とかハチミツとかが降るのかもしれん。やや、あの雪の一週間は実はヤマブシの仕業だったのかもしれんぞ? 全くヤマブシめ、人騒がせな男だ。
 仕方ないので尻の結界のことは諦めて現場に戻り、今日も元気に働く。俺のことを「無能の中忍」扱いした上忍は、最近俺のことを「面白くてなかなか使える中忍」に格上げしてくれたみたいだから嬉しい。そうなんだぞ、俺だって結構使える中忍なんだぞ?
 仕事を終えてカカシさんのマンションに帰ると、俺の王子様が夕ごはんの支度をして待っててくれていた。今日はシチューだ、シチュー。断っておくけど俺が作る、途中までカレーと一緒のアレじゃないぞ? ブニヨンだかオニオンだかユニオンだかとワインと言う液体と牛肉がたんまり入った茶色いヤツだ。実は俺は白いヤツの方が好きなんだけど茶色の方が高級なのでこっちの方が多分偉い。あと、カカシさんが作ってくれるものだから俺が作る白いヤツより美味しい。
 俺はその美味くて偉いシチューを食べながら今日ナツに聞いたことをカカシさんに伝えたが、カカシさんは既にその噂を耳にしていたようだった。流石俺のカカシさん、情報が早い。カッコイイ。
「俺はそういった噂にはあまり惑わされない方が良いと思うんだけどねぇ」
 カカシさんは感想を述べながら手を伸ばして俺の口元を拭ってくれ、俺のシチューが付いた指をペロリと舐める。
 キュンときた。たったそれだけのことなのに胸キュンきた。カカシさんはいつだって行動全部で俺をキュンキュンさせるんだ。くそ、俺はいつかカカシさんのせいでキュン死してしまうんじゃないだろうか。……キュン死ばんざい! カカシさんだいすき!
「でも火のないところに噂は立たないって言うし、一応対策を取るべきでは? 何かあってからじゃ遅いわけだし」
 俺は木ノ葉の忍として、キリっとした顔で進言してみた。これでカカシさんは更に俺に熱をあげたはず。
「どうなんだろうねぇ。まぁ、コハル様が気にして警備を強化するとは言ってるみたいだけど」
 カカシさんは何となく警備の強化に反対しているみたいだった。何でかは分からない。
 夕ごはんを食べ終えると今日は俺が洗いものをしてカカシさんが先に風呂に入る……と思っていたんだけど、カカシさんが洗いものを手伝ってくれた。二人でシンクの前に立って、俺が洗剤で皿を洗う役になりカカシさんが水気を拭く役だ。皿を洗いながらちゅっちゅくっちゅっちゅくしたことは言うまでもない。あまりにも楽しくて興奮した俺がその場でじたばたして皿を一枚割ったことも言うまでもないだろう。
 それにしても恋人というものの威力は凄まじいな。戦闘力は十万くらいあるな。今の俺とカカシさんなら大蛇丸どころか世界征服すら片手一本でできちゃうかもしれんな。よし、かかって来い。かかって来たまえ世界! 俺達にかかれば世界なんてあっと言う間に愛と平和に満ちたカカシとイルカのラブラブパラダイスに早変わりだ!
「一緒にお風呂に入ろうか」
 最後の皿を食器棚に戻すと、カカシさんはニッコリととんでもないことを口走った。一緒に風呂、それは正に親密な恋人同士しか成し遂げることのできぬ一大イベント! そうか、遂にこの時が来たのか。俺は銭湯が好きだから誰かと風呂に入るのなんて慣れっこです余裕です。でもここであえて恥じらう俺! 恥じらいを見せてカカシさんをキュンキュンさせる作戦をとる俺!
 と思ったけど、やっぱ興奮してその場で服を全部脱ぎ捨てる俺!
「イルカ先生落ち着いてー。はい、服は洗濯機に入れますよー」
「はいっ!」
 フルチンのままその場で「気を付け!」の姿勢を取り、三秒くらいピシっとしてから我慢できずにカカシさんに飛びついた。ワンコやニャンコが匂いを付けるが如くカカシさんに全身を擦り付け匂いを付ける俺。カカシさんみたいな素敵な王子様は俺の匂いで一杯になっちゃえば良いんだもんね。そんで上忍待機所とかで「なんだカカシ、お前の身体からうみのイルカの匂いがするぜ?」とか言われれば良いんだもんね。そしたらカカシさんは「俺のハニーにマーキングされちゃったんだよねー」とかって惚気れば良い。良い、良いよそれ! どんどん惚気てください!
「もー、イルカ先生は甘えん坊だなぁ」
 はい甘えん坊です! だから抱っこしてください!
「はいはい、よしよし」
 カカシさんのナイスボイスが耳に届くと思わずオチンチンがおっきしそうになった。駄目だ俺、もうカカシさんが好きすぎてもう駄目。カカシさんが好き。だいすき!
 カカシさんに抱っこされて風呂場に行き、カカシさんに髪を洗ってもらう。身体もモシャモシャと泡だててもらう。勿論俺だってカカシさんの綺麗な髪や身体をきゃーきゃー言いながら洗うもんね。洗いっこだもんね。くそ、なんて楽しい恋人ライフ。これほどまでに俺を夢中にさせるとは、恋、おそろしいヤツ。いや俺の王子様め、おそろしいヤツ。大好き! しかし長い待機期間は無駄ではなかったな。むしろこれは耐え忍ぶこのウン十年があったからこそのご褒美的アレなのか。有難う三代目、有難う父ちゃん母ちゃん。イルカは今、しあわせです。もう俺とカカシさんは一生仲睦まじく暮らすのです。相思相愛で一子相伝で焼肉定食で比翼連理です。うわ、俺今むつかしい言葉使った! これも三代目のおかげ!
「カカシさんキスー! キスー!」
「んー。はいはい」
 ちゅっちゅとキスしてくれるカカシさんに抱きついていると、カカシさんは俺を持ちあげて一緒に湯船に入ってくれる。 もーーーー、なんて素敵なんだ俺の王子様は! 駄目、好きすぎる。俺、死ぬかもしんねぇ。駄目だまたおちんちんおっきしてきた。こんなにチンコが元気なのは十代の頃以来だ。チンコよ待ってろ、もうすぐカカシさんがまたあのゴールデンフィンガーでイイコトしてくれるに違いないぜ!
「キスー! キスー!」
「はいはい」
 ちゅっちゅくちゅっちゅくしていたら、今度は泣けて来た。カッコ悪いからぎゅっと目を閉じカカシさんの肩に顔を埋める。駄目だ俺、ほんと、カカシさんのこと好きすぎる。しあわせすぎる。
 しあわせすぎて泣くなんて、初めてだ。
 父ちゃんと母ちゃんはずっと傍にいてくれると思ってた。三代目だって俺が死ぬまで火影様やってると思ってた。ミズキやナツや生徒達に囲まれて楽しく暮らすなんて当たり前だと思ってた。それなのに俺の大好きな人達はお星様になったし、ミズキは悪いことをしたし、生徒だってどんどん俺の手から離れていく。その都度俺は落ち込む。しあわせな時間を当たり前に享受して、それがなくなってからやっと、それは当たり前のことじゃなかったんだって気付いて落ち込む。
 でもカカシさんは違う。
 こんな夢みたいに素晴らしすぎるカカシさんとの恋人ライフは、当たり前なんかじゃなさすぎて。
「カカシさん、いなくならないで」
「大丈夫だよ」
「父ちゃんや母ちゃんや三代目みたいに死なないで」
「死なないよ。俺は強いよ?」
「嫌いにならないで」
 カカシさんに嫌われたら俺は死んでしまう。こんなに大好きなのに嫌われたら、俺の心なんてなくなってしまう。心がなくなったら身体だって消えてしまう。
「カカシさんが好き。だから嫌いにならないで」
 心の底からそう祈ると、カカシさんは俺の頬を手で挟んで顔を上げさせコツンとオデコを当ててきた。
「貴方、本当に愛しい人だね」
 ぽつりと呟かれたそれは紛れもなくカカシさんの声だったけど、俺の知らない人みたいに聞こえた。思わず目を開けると雨のようなキスが顔中に降りそそいでくる。
 それからカカシさんは俺の身体を担いで風呂から上がり、ベッドまで運んでくれた。そこで簡単に髪と身体を拭いてくれて、キスで俺の涙も止めてくれる。それどころか、色んなところに数えきれないキスをしてくれる。指でも口でもアレを可愛がってくれたから、俺は馬鹿みたいに簡単に白いのを吐きだした。
 好きだ。どうしようもなく好き。
「俺も…俺も口でする」
 上手くできるかどうか分からないけど、やってもらうばかりじゃ駄目って分かってるからそう言ってみた。でもカカシさんは起きようとする俺を押し倒して、何故かカーテンを開けて夜空を見上げた。何だろうと思って俺もそこを見たけど、普通の夜空だ。今日は月がないので星が煌めいている。
 カカシさんはそれを確認するとカーテンを閉じて、酷く優しい眼差しで俺を見詰めた。
「今日からは本当のセックスをしようね」
 本当のセックスって何だろう。
 今までのセックスは偽物のセックスだったんだろうか?
 よく分からないけど、カカシさんはカッコ良かった。いつでもどこでも本当にカッコ良い。その眼差しだけで俺を蕩けさせる。
「なるべく時間かけるけど、最初は痛いよ。でもすぐに悦くさせるから我慢して」
 最初は痛い? 我慢?
 分からないけど、とにかく。
「キス……キス」
「うん、キスしようね」
 ちゅっちゅと音を立てて二回、それから深いキスをしてもらった。カカシさんはキスが上手いから俺はすぐに舌で押しつけたり絡ませたりすることに夢中になる。そうしているうちにカカシさんは俺の身体の色んなところを色んなふうに触ってくれる。足の付け根とか脇腹とか胸とか。
 毎日のように弄ってもらっているから、俺の胸は凄く感度が良くなった。いやらしいことしてもらえるんだって思うだけであんなに小さいのにちゃんと勃ち上がってカカシさんの愛撫を待っている。そして、触ってもらえると凄く悦ぶ。ゆっくり焦らして触ってもらうのが大好きでカカシさんもそれを知ってるから、俺は胸をたくさん弄ってもらえる。
「んっ……アッ…んっ」
 両方触ってもらうのが好き。右も左も平等に可愛がってもらうのが好き。カカシさんはちゃんとそうやってくれる。
 時々摘んでもらうのが好き。摘んで、ちょっとだけ捻られるのが好き。
「んんっ…ァ、ア、んっ」
 カカシさんはちゃんとそうやってくれる。
 胸を触ってもらうとじんじんとそこが痺れてきて、連動するみたいにアレに大きくなる。ぼんやりしてきてカカシさんといやらしいことをすることで頭が一杯になる。
 もっとして欲しい。いやらしいこと、もっとたくさん。
 カカシさん、もっとたくさん。
「――っ?」
 くにゃくにゃになって凄く良い気持ちだったのに、変なところを触られて理性が舞い戻ってきた。カカシさんは思わずそれを止めようとした俺の手を片手で掴んで、またソコを撫でる。
「え、ま、ちょ、カカシさん、ソコ」
「ここ使うよ。最初は異物感あるだろうけど我慢して」
 だってそこ、だって。ちょっと、カカシさんちょっと待って。だってそこ、ヤマブシが。
 言いたいことや訊きたいことは沢山あったのに唇で口を塞がれ、俺はそこを指で撫でられる気持ち悪さに身をくねらせた。心の準備はできてたし身体のメンテナンスだって怠ってなかったけど、急にそんなことされるとやっぱり混乱する。大混乱だ。だってそこはヤマブシが触れないようにしてたはずで、だからカカシさんは今までしなかったはずで、そんでヤマブシはまだ任務から帰ってなくて。
「ンーッ!」
 指を挿れられるともっと混乱した。何だか急に怖くなって暴れたけど、カカシさんは止めてくれない。普段はあんなに優しいのに、俺が怖がってるって分かってるくせに止めてくれない。
 でも急に、本当に突然、なんかきた。
 ビクって身体がなるような何かがきた。
 射精する時のビクってなるのに似てたし、そういう感覚に似てたから出たのかのと思った。気持ちイイとか気持ち悪いとか、そういうのじゃない、変な刺激。
 カカシさんが同じところを触るとまたビクってなった。今度は頭が痺れて、触られたところからどんどん熱が広がってきた。
 またビクってなる。
 背中が反って足もピンとなる。精液、出てるのかもしれない。よく分からない。
 カカシさんはソコばっかり狙う。
「ここ、いっぱいシてあげるからね」
 やっとカカシさんが唇を離してくれた時には、もう暴れる気にはなれなかった。それどころかソコを触ってもらえるのが嬉しくなってきて、自分から大きく足を広げた。
 変な格好。でも触って欲しい。もっと押したり撫でたりして欲しい。
 カカシさんはソコを弄りながらもう一方の手で胸を触ってくれる。唇でも胸をやってくれる。時々歯を立てたり啄ばんだりしてくれる。その度に俺は声を上げて悦んだ。胸とお尻のソコは気持ち良くて気持ち良くて、時々電流が走るみたいに全身がびくびくする。それで、キモチイイのが全部アレに繋がって、白いの出したくなる。
 とろとろになって力が抜けて、熱くて、汗が沢山流れた。カカシさんがしてくれること何もかもが気持ち良くって、いやらしい気分でいっぱいになった。自分がどんな格好をしていてどんな声を出しているのかも分からなくて、カカシさんが何を言っているのかもよく分かんない。
 キモチイイ。
 汗、びしょびしょ。
 心臓がドキドキしてる。早く白いの出したい。
「いくよ」
 なにが? と思った時にカカシさんのが入ってきて、呻き声が出た。それでも我慢できる。だってこれは我慢しなくちゃならないことで。  だってこれは、俺がずっと望んでいたセックスで。
「……カカシさん、すき」
 上手く頭が回らない。でも、ぼろぼろと涙が零れた。
 カカシさんが好き。大好き。
 カカシさんは俺の呼吸に合わせて入って来る。俺に負担をかけないように、とても慎重に入ってきてくれる。この人は本当に、何から何まで優しくて、カッコ良くて、素敵なんだ。
 全部入ったよ、って言われた。
 カカシさん、すき。ほんとうに、すき。
 俺はそう言った。涙が止まらなくなったから、カカシさんは沢山のキスをくれた。
「イルカはもう俺のものだよ」
 カカシさんは嬉しそうにそう告げて、ゆっくりと動きだした。




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