ダッシュで家に帰るとカカシさんはまだ戻って来てなくて、俺は風呂の準備をしながら夕ごはんを作る。俺はカカシさんみたいに器用じゃないから御馳走は作れないけど、俺の焼きうどんとカレーは美味いと評判なので渾身の焼きうどんを作るに決定。だしの利いた焼きうどんに野菜と豚肉をたっぷり入れて、かつおぶしをまぶすのだ。美味い! まだキャベツを切っただけだけど、既に美味い! 俺天才!
その他にごはんも炊いたし豆腐とお揚げの入った味噌汁も作った。味噌がちっとばかし濃くなったけど、これは愛情の証だと思えば良い。豆腐を早く入れすぎて茶色くなったけど、これも愛情の証だ。良い感じだ。味噌汁そのものが愛情の証と言っても過言ではないな。もう気取らなくても良い関係だという証拠、俺達はもうブニヨンだかオニオンだかユニオンだかが入った小洒落た料理を小洒落た店でつつかなくても良いんだよね、みたいな。もうそういう段階って終わってるし?もう気取らなくても良い夫婦みたいな関係だし?みたいな! いや俺そういう料理食べたことないけどさ。
それにしてもなんという完璧な料理。これでカカシさんは更に俺にゾッコンになるな。ただでさえあの人は俺に参ってるからもう完全にメロンメロンのメロローンってなってメロンちゃんに変身するかもしれんな。良い、良いんだぜそれでも。俺はどんなカカシさんでも受け止める自信がある。今の俺の度量は底なしの蓋なしで、どんどん湯気とか出ちゃっても平気。
「俺の愛という名の熱湯はそんなものじゃ減らないんだぜ?」
やべ、今、完全に決まった。俺今、完全に世界一カッコ良かった。
「焦げ付きもしねぇんだぜ?」
うは! なんだ俺、確立変動でも起こったのか? うみのイルカ伝説とかできちゃう勢いだぞこれは。
「どんどん沸騰しても良いんだぜ?」
「イルカせんせ、お味噌汁は沸騰させちゃ駄目だよー」
「きゃーーーーーっ!」
突然聞こえたカカシさんの声に飛び上がった。俺は忍者だから思わず三メートルくらい飛び上がったかもしれない。いやそれは嘘だけど本当に飛び上がった。
「ただーいま」
「おかえりまさい! じゃなくておかえりなまさ、じゃなくておかえりまさ」
「うん、ただーいま」
驚きすぎて舌が回らないけどカカシさんはそんな俺にちゅっとキスをしてくれた。やばい、この人は本当に俺にお熱だ。高熱だ、溶岩だ、沸騰だ。あ、味噌汁が沸騰してるから火を消さねば!
ごはん作ってるんです先にお風呂に入ってくださいって言うと、カカシさんは俺の頭をイイコイイコして「ありがとねー」とまたキスしてくれて、そんで風呂場に向かった。何と言うラブラブしい生活。ほんの少し前までの俺の生活とは天と地の差があるどころか、火星と海中トンネルの差。これが恋人との暮らしと言うわけか、なるほどなるほど。
カカシさんが帰って来たので、俺はフライパンを温めてその中に用意しておいた食材を放り込んでいく。じゅうじゅうと肉が焼ける音がして、すぐに良い匂いが漂ってきた。美味い! まだ食べてないけど。火が通り難い野菜から順に炒めていって、うどんも入れる。タレを入れてよくまぶし、少し焦げ目がついたところで完成だ。美味い! 超美味! びみびみ!
テーブルの上を拭いてビールとグラスを出して食事の準備を整えると、カカシさんが戻って来た。暑いからか上は何にも着てなくてバスタオルを肩にひっかけた状態だ。俺がそれをやったら単に「オヤジ臭い」になるけど、カカシさんがやるとすごくカッコイイ。この人はきっとステテコを穿いてもカッコイイに決まってるぜ。
焼きうどんを皿に盛って上に鰹節をかけ、テーブルの上に置く。鰹節が「サスケくぅん」と言っているサクラのようにクネクネして実に良い感じだ。サクラがじゃなくて鰹節がだぞ? 味噌汁もお椀に入れて準備完了。俺も着席する。
「食べてくださいモリモリ食べてください! さぁ召し上がれドンドン召し上がれ! 俺の焼きうどんは美味いって有名なんですよ。自信作です。タレは焼きうどんの袋に入ってるヤツなので誰が作っても同じ味だという噂も耳にしますが、これには愛情と言うスパイスが九割以上入ってます。残り一割が元々のタレの味です!」
何気に「俺もカカシさんにゾッコンなんだからね」というアピールをしておいた。これはアレだ。カカシさんが「俺ばっかりイルカ先生のこと好きなんだ……」って任務中に寂しくならないようにだ。俺も貴方のことを好きですって常に伝えておかないと恋は上手くいかないんだよ、君ィ。恋のことなら何でも俺に訊きなさい、君ィ!
「有難うイルカ先生。ではいただきますね」
カカシさんは手を合わせて少し頭を下げると、箸を持って焼きうどんを食べた。さぁどうだ、俺の焼きうどんは天下一品だろう!
「うん、美味しいです」
ニッコリと微笑むカカシさん。
「余裕ですよ余裕! 俺、焼きうどんは本当に得意ですから超余裕! あと、カカシさんに食べてもらうと思ったらいつもよりも張り切っちゃって。あはは!」
意味もなく立ち上がってしまった。行儀が悪いので座り直したが、カカシさんがニコニコしながら食べてくれるので俺は嬉しくってその後何度も立ち上がりそうになった。それどころか里内を三周ほどランニングしたくなった。走りながらそこらじゅうの生き物に「やあ、キミも俺の焼きうどんを食べるかい?」みたいな感じで声をかけたくなった。
しかし焼きうどんと味噌汁だけとは、こうしてみると少し貧乏臭かったかもしれない。俺一人なら味噌汁も作らないから「味噌汁まで付ける俺流石!」と思ってたけど、ここにもう一品あった方が見栄えが良かったかもしれん。くそ、貧乏暮らしが長いとこれだからイカン。キンピラでも作れば良かった。
もしやカカシさん、「イルカ先生ってやっぱり貧乏臭い人だな」とか思ってないだろうな? それどころか「こんな貧乏臭い人とエリート上忍の俺では上手くやっていけないかもしれない」とか不安になってないだろうな?
「安心してください!」
「はい?」
「足りないといけないと思って、ごはんも炊いてあります!」
「そう。イルカ先生は気が利くね」
誉められたのが嬉しくってまた立ちあがったしまった。どうしようかと思ったけど、丁度ごはんの話をしたところなので炊飯器のところに行く。カカシさんに背を向けるとちょっと落ち着いて、よくよく考えれば俺の食生活なんて全部知られていることに気付いた。なにせこの人は俺のアパートに三日に一度は遊びに来ていて、俺と一緒にカップラーメンを食べていた人なんだった。そうだ、別にこんなことではカカシさんは俺を嫌いにならない。カカシさんはカッコイイ上に上忍だし、とことん優しいし、カップラーメンも食べる。なんて素敵な人なんだ。最高だ。流石俺の運命の人だ!
「カカシさん大好きだ!」
「うん。イルカせんせ、おにぎり作ってー」
「任せてください! 百個くらい作ります!」
「小さめのやつ二個で良いよー」
小さめのやつ二個な。小さめのやつ二個。分かった、絶対に小さめのやつを二個作ってみせる。うみのイルカの名にかけて!
その後俺は全身全霊で小さめのおにぎり二個を無事に作り終え、カカシさんがニコニコしながらそれを食べきるのを見てまた立ち上がり、「落ち着いて食べようね?」って言われたから頑張って落ち着いて自分の分を食べ終えた。カカシさんは優しい人だから「俺が後片付けするから、イルカ先生もお風呂に入って来てー」なんて思いやりに満ちたことを言ってくれたのでその通りにし、念入りに身体を清めた。念入りにだ。何故ならこれから、二人っきりの夜が始まるからだ。うむ!
風呂から上がると洗面所で歯を、これも念入りに磨く。カカシさんとチューするだろうからしっかりと磨き込まなくてはならない。俺の股間は今石鹸の匂いがするはずで、こうして歯を磨いているからお口も爽やかなハミガキ粉の香りが漂うはず。どんと来い、カカシさんよ何でもするが良い! 正に俺はまな板に乗ったイルカ。好きなようにアレコレやって構わないさ。
しかし落ち着かない。これからのことを考えると心臓がバクバクしてきた。イカン、落ち着かなければならん。俺はもうチェリーボーイではないのだから余裕を持ってコトに当たらねばならんのだ。え? 俺、まだ童貞? いや、細かけぇことはどーでも良いんだよ!
落ち着くために部屋の中をウロウロしていたらカカシさんに捕まった。よく分からんが頭を撫でてくれたので、嬉しくなって玄関に行ってキッチンに行ってリビングに行ってトイレに行って、また玄関に行った。これだけウロウロすれば心臓は鎮まるだろうかと思ったが、全然駄目だった。
口を濯いで寝室に入る。ベッドに横たわる。駄目だもっと緊張してきた。俺、プレッシャーに弱いところがあるんだよね。伊達に中忍試験何度も落ちてないんだよね。一度緊張するとどうにもなんないんだよね。それもこれも全部カカシさんが悪い。カカシさんが素敵すぎるから悪い!
「カカシさん好きだああああ!」
「はいはい、足をバタバタさせないのー」
枕に向かって告白していると、世界一優しい俺の恋人がやって来る。始まるぞ、恋人たちの夜が始まるぞ!
「キス! キスー!」
うがーー! 俺にキスしろーー!
「そんなに暴れないの、キスしたくってもできないでしょー?」
低く甘い声でそう言いながらカカシさんが両手で俺のほっぺを挟んでオデコをコツンってするから、一瞬にして俺の頭と身体はとろんってなった。なにこれ素敵すぎる。オデココツンとか素敵すぎる。両手でほっぺを挟んでオデココツンを本当にやっちゃう人がこの世に存在するなんて思わなかった。カカシさんは俺の王子様みたいだ。
王子様だ。本当に。
顔も綺麗だし優しいし、見詰めるだけでこんなにうっとりしてしまう人なんて他にいない。
カカシさんが素敵すぎてもう言葉なんて出て来なくて、後はされるがままになった。
キスされるとやっぱり身体が痺れた。爪先までビリビリと電流が走るみたいでどんどん力が抜けていって、カカシさんはそんな俺の身体に徐々に触れていく。二の腕から胸元に、胸元から脇腹に、脇腹からアレに。
カカシさんはそっと触れているだけなのに滅茶苦茶気持ち良くて、俺は女の子みたいに声を出した。そして、ちょっとやられただけですぐに白いのを出した。
カッコ悪いなぁって思う暇もなく、カカシさんは行為を続ける。
今度はじっくりと胸を責められた。そこは最初は全然気持ち良くなかったのに、カカシさんが弄り続けるから何だか変な気分になってきた。指の腹で転がされると息が弾んでくる。摘まれるとジンジンしてくる。それを少しだけ潰されると。
「……ん……あっ…」
もっと弄って欲しくなる。
全身が汗ばんできて、どんよりとした熱に思考も支配される。
「イルカ先生は可愛いねぇ」
耳元で囁かれるとその低い声に何もかもが痺れる。もっともっと色々して欲しくて堪らなくなる。
頭の中がエロいことでいっぱいになる。
首筋を舐められると我慢できなくて自分のを握った。
「俺のも握って?」
請われたからカカシさんのと自分のを一緒に握って扱いた。胸からくる不思議な熱が扱く度に広がって昂ぶる。それはアレに微かに直結してるみたいで、弄られれば弄られるほどどんどん悦くなってくる。胸もアレも物凄く感度が良くなって、頭の中はエロいと言うよりも変態じみたことでいっぱいになる。もっとあれをああして、こうして、カカシさんにもっと…シてもらって。
「カ…シさ、……あっ…あっ」
カカシさんも俺と一緒にアレを握った。二人で二人のを一緒に扱く。カカシさんは凄くいやらしく先を撫でるから俺の腰が揺れる。
もうでる。キス。キス。
両方して。カカシさん、反対の胸もやって、そうやってやって、摘んだり捻ったりして、さっきやったみたいに両方いっぺんにやって、弄って。
「こっち…も」
やってやってやって。
「舐めてあげるよ」
「や、キス! キス…ん……キス」
キスは絶対。舌、欲しい。唾液欲しい。昨日みたいにいっぱい。
「じゃあイルカ先生、両手で持って」
両手で持つ。さっきカカシさんがやってくれたみたいに、ちゃんと先を撫でる。だからやって。
やって。
キモチイイ。
キスも、もっと。もっとカカシさん。カカシさん好き。好き。カカシさんすき。
「貴方本当に可愛いね」
沢山してもらって白いのいっぱい出してほとんど眠りかけている時に、カカシさんはそう呟いた。
それは紛れもなくカカシさんの声だったけど、俺の知らない人みたいに聞こえた。