僕はアカデミーの教室で、授業を受けているんだ。教壇の上には葉ノ紀先生がいて、僕の隣には黒羽が座ってる。前の席は大輔で、後ろはミキ。あの頃と同じだね。
ガラって扉が開く音がしたから、僕たちは振り向く。教室の後ろにはクラスのみんなの親が来ていて、みんなニコニコして子供達の様子を見ている。
誰が来たんだろうって思ってると、黒羽の向こう側の子のお母さんがやって来たところだった。僕たちはその子の向かって、「お母さんが来たよ」って教えてあげる。
その子は驚いて振り返る。そして、自分のお母さんに手を振って僕たちに言う。
「俺のお母さん、美人だろ」
すっごく自慢気で、僕たちは思わず笑っちゃうんだ。でもすぐに黒羽が「いちばんの美人だよ」って言ってあげる。
その子はとっても嬉しそうな顔をする。
またガラって扉が開く音がする。僕たちが振り返ると今度は大輔のお父さんだ。父兄の中でいちばんでっかいお父さんだよ。
僕は大輔の背中をツンツンと突いて、「大輔、お父さんが来たよ」って教えてあげる。
勿論大輔はすぐに振り返って、お父さんに手を振った。
またガラって扉が開くよ。次はミキのお父さんとお母さん。ミキに教えてあげるとミキはここぞとばかりに挙手をして、見事先生の質問に答えてみせたよ。すっごい難しい問題だったのに、その質問が出ることなんて百年も前から知っていたみたいな勢いだ。それからミキは自分の両親を振り返って、ニヤリと笑った。どう? 私はこうやって忍として生きていけるんだからねって宣言するみたいにね。
さすがミキ。すごい女の子だ。
それからも、ガラって扉が開く音が何度も続いた。僕たちはその度に振り返って、誰の親が来たのかを確かめた。
みんなのお父さんやお母さんが来ていたよ。ミキのところみたいに、両親揃って来てる子もいた。みんなみんな、嬉しそうだった。