イルカ先生へ。
もうすぐ夜が明けます。夜が明けたら僕はここの前線に回され、作戦の捨て石として使われることになるでしょう。そして恐らく、僕は死ぬでしょう。
昨晩は最後の晩餐として、戦地とは思えないなかなか立派な夕食を食べました。里がこんなことに気を回すなんて、知らなかったです。なんだか不思議だったけど、でもそんなに悪くない気分でした。
夕食を終えると水浴びをして、歯を磨きました。それからぼんやりと夜空を見上げて、色々なことを思い出していました。黒羽のこと、イルカ先生のこと、葉ノ紀先生のこと。一杯笑っていた当時の僕のこと。
夜が更けると簡易ベッドに潜り込んで眠りました。
そしてさっき目が覚めて、僕は筆を取ってこうしてイルカ先生に手紙を書いているのです。
五月二十六日。あの日は何も書けなかった手紙を送ったけれど、今度はちゃんと書くことがあるのです。
あのね、イルカ先生。
今、夢を見たよ。素晴らしい夢。とても幸福な夢。
聞いて? イルカ先生聞いて?
今ね。あのね、今ね。