1月3日
あの日からずっと考えている。
あの日、男性同士の性行為に興味を持った僕はネットでその実践方法を調べた。
どこの器官をどのように使用するのかは理解出来たが。
理解出来たが、何故その画像を見て僕の陰茎は勃起したのか。

1月4日
僕は酷く混乱している。御節の数の子にも手を出せなかった程だ。
自慰行為を覚えてから余りにも其れに没頭し過ぎた為だと推測されるので、これから暫く自慰を止めようと思う。
猫耳と眼鏡教師とは暫くお別れだ。

1月14日
あまり深く考えるのは止めようと思う。思うに、あの時の僕の陰茎は事ある毎に刺激を加え過ぎた為に一時的な機能障害を起こし、的確な判断を行わずに知覚される映像全てに反応を起こすようになったのであろう。
そうに違いない。間違いない。
何故ならば、今日押丼犬君の顔を思い浮かべてみたが、僕の陰茎は全く反応しなかったどころか激しく萎縮したからである。確かにおばさん顔であるが彼は間違いなく男性であるし、その彼を想像しても陰茎に変化が現れなかったと言う事が僕が同性愛者ではない何よりの証拠なのである。

1月15日
押丼犬君には反応しなかった僕の陰茎が、今日の体育の岩崎君の太腿に極めて激しく反応を示した。
鬱だ。

1月16日
岩崎椰太郎岩崎椰太郎岩崎椰太郎岩崎椰太郎岩崎椰太郎岩崎椰太郎岩崎椰太郎岩崎椰太郎

1月17日
岩崎椰太郎

1月18日
岩崎椰太郎

1月19日
岩崎君の事を考えるのは止めようと思う。

1月20日
彼の事は考えない。

1月25日
僕を甘美に誘惑し続ける岩崎君の太腿を断ち切る為に、岩崎君の太腿を妄想して自慰を行った。案の定、射精を終えると凄く泣けてきた。
しかしこれで良い。最初で最後だから。
もうしない。

1月30日
岩崎

2月1日

2月6日
嗚呼

2月13日

2月20日
ずっと気分が優れず、日記も書けない状態だった。自慰すら行っていない。
もう猫耳を見ても眼鏡教師を見ても僕の陰茎には変化が起こらない。一体僕はどうしてしまったのだろうか。

2月21日
このままでは駄目だ。気分転換しなくてはならない。
そうだ、こう考えよう。
【一度だけなら好奇心】
うむ、これだ。間違いない。
明日からは無理にでも楽しい事を書こう。
それと、今日またしても母がDVD観賞後に
「多奈稼、これはどうやって巻き戻しすれば良いのかしら?」
と、訊ねてきたので、僕は
「僕が後でやっておくから、そのままにしておいてー」
と、答えておいた。説明する手間が省けたので、これからはこれでいこうと思う。

2月22日
級友の青木君は弁当の時間だけでなく休憩時間もどこからか薩摩芋を取り出し其ればかりを食しているので、僕と押丼犬君は彼の事をこっそり「甘藷先生」と呼んでいたのだが、いつの間にかそれが広まってしまった。広まっただけならまだ良いが、「甘藷先生」が何時しか「甘藷」へ、剛田君に至っては今日ついに「甘藷」から「浣腸」と渾名を変形させてしまった。
剛田君にこう呼ばれたら、青木君の名が本当に「浣腸」になってしまう恐れがある。僕は責任を感じずにはいられなかったので、放課後に押丼犬君と緊急協議を行い、明日から青木君を「甘藷先生」ではなく、正しく「青木昆陽」と呼ぶ事を決めた。
浣腸ではなく昆陽の方が広まってくれれば良いのだが。
因みに青木君の本名は、青木ひろしだ。

2月23日
剛田君により青木君の渾名が正式に公表された。
彼はこれから「こんちょう」と呼ばれる。
浣腸よりはましなので、それで勘弁して頂きたいと思う。

2月25日
今日、剛田君が一日中学生服と学生ズボンを前後逆に着て後頭部に自前のお面を付け、後ろ向きで授業を受けていた。教師達はこぞってそんな剛田君を黙殺していたが、彼は自分のこの思いつきが功を奏し授業放棄を見事隠蔽出来たと思っているようだ。
誰かがこっそり剛田君に物事の真理を教えた方が彼の為になると思われるのだが、それは彼の恋人である碇君に任せたいと思う。

2月26日
こんちょう君の今日の弁当は薩摩芋ではなくフランスパンであった。級友達は皆こんちょう君の変化に戸惑っていたが、そのフランスパンがヤマザキ製品であった為に
「こんちょうは春のパン祭りに参加するのだろう」
と言う憶測をして話は終わった。

2月27日
クラスのシキシマ派がシキシマパン拡張キャンペーンと称し、こんちょう君にシキシマのフランスパンを贈呈した。

2月28日
朝登校したらちょっとした騒ぎがあった。どうやらクラスのフジパン派が、こんちょう君の机の上に食パン一斤を置いておいたらしい。フランスパンでなく食パン一斤であるがゆえ、これは悪質な嫌がらせだと騒ぎになったようだ。フジパン派はすぐさま犯行を否定し、
「これはヤマザキ派、もしくはシキシマ派の陰謀だ」
と、息を巻いていたが、昼の休憩時に自らをフジパン過激派と名乗る者が犯行声明を出したので、フジパン穏健派はこれから肩身の狭い思いをするだろう。
可哀想に。

2月29日
こんちょう君の弁当が薩摩芋に戻った。
これでクラスは安泰だろう。

3月10日
どうしても我慢出来なくなったので、今日は久し振りに自慰をした。不安だったものの、僕の陰茎はちゃんと猫耳に反応したしその後眼鏡教師にも良い反応を見せた。猫耳を見ても眼鏡教師を見ても陰茎に変化が現れなかった時は激しく動揺したものだが、これでひとまず安心出来る。
しかし、精子が黄色っぽかった上にかなりのゼリー状であったのだが、これは病気なのだろうか。明日剛田君に相談してみようと思う。
それと、自慰が終わると僕はまた岩崎君の事を考えてしまった。僕は自分が思っているより、かなりしつこい性格のようだ。

3月12日
剛田君に
「シコシコ禁止週間の後にヤると、俺も黄色っぽいゼリーみてーな精子出るぜ? タマキンの機嫌直るまでシコシコしろよ」
と、言われた。とりあえず、今日から睾丸の機嫌が直るまで自慰をしようと思う。
それにしてもシコシコ禁止週間とは何であろうか。

3月13日
剛田君達と一緒に校長室の前にある池で鯉を釣っていたら、生徒指導の教師に叱責された。僕は、
「もしこれが鯉ではなく金魚であったとしても僕達は叱責されたのでしょうか」
と、訊ねたが、明確な解答を得る事は出来なかった。良く分からないので、明日押丼君と金魚を釣って反応を見てみようと思う。

3月14日
押丼犬君は先日僕が90式戦車のハッチについて不平を漏らした事を根に持っているらしく、校長室前の池の金魚釣りの誘いに乗ってこなかった。とても残念だったが、その代わり僕は碇君と金魚釣りを行った。以前はミルコ・クロコップのような殺気溢れる視線を放っていた碇君だが、去年のクリスマスから態度が一変し、今では春風駘蕩としている。
金魚釣りに精を出しつつ碇君と歓談していると、ふとした事から剛田君の話題になった。
「高志君は少し分かり難い部分があるんだ」
碇君はこう言ったが、僕は剛田君とは「分かり易い」とか「分かり難い」云々等と分類出来る人間ではないと思う。何せ彼は、自分の家の天井裏に忍者とその家族が住み着いていると本気で信じているのだ。また、碇君は
「セックスについて幾つか悩んでいる事がある」
とも言っていた。
相談に乗ってあげたかったが、何せ僕はまだ性行為を行った事がないので何も言えなかった。もしかしたら剛田君は碇君とまぐわっている最中に、彼の授業中の発言のような奇天烈な言葉を口にして碇君を混乱させているのかもしれない。
それと、金魚を釣っていても僕と碇君が生徒指導室に呼び出されるような事態にはならなかった。

3月18日
もうすぐ3年になる。
岩崎君と組が変われば良いなと思う。

3月19日
本当は、また同じ組になれたら良いなと思っている。

3月22日
最近、自慰専門参考資料はもっぱら猫耳の魔法少女である。猫耳で乳房が平らに近く、怪しげな呪文を使う少女に心がときめくのだ。
しかし、これらの漫画の少女の髪がミンキーモモやハマーンカーンのような桃色だったり、ハードムースでガチガチに固めたような髪形でしかも紫色だったりするのは何故だろうか。僕は普通の黒髪の猫耳乳房小さめ魔法少女が良いのに。

3月23日
今日、剛田君が3年の先輩4人と喧嘩をしていた。
「俺を騙しやがってーーッ!!」
と、剛田君が鼻血を噴出させながら叫んでいた。憤怒の相を帯びた剛田君に、皆…碇君さえも、彼を止める事が出来なかった。
しかし喧嘩が終わった後に
「四天王は本当にいるんだ…俺は信じる」
と、剛田君が項垂れながら嘆いていたが、アレには如何なる意味があるのだろうか。

3月24日
「2年の最後に良い事をしよう」と言う話になり、明日は各自ベルマークを持参する事に決まった。

3月25日
残り度数5のテレフォンカード2枚・パチンコに使用するパッキーカード1枚・ユリカカード1枚・缶のプルトップ3個・リサイクルマークの「プラ」の部分を切り取った物18枚・ネスカフェ珈琲のラベルに付いているネスカフェのマークを切り取った物1枚・金のエンジェル1枚・銀のエンジェル2枚・金の卵のシール6枚・商店街の福引券6枚・バーコード類合わせて19枚・郵パックのシール1枚・アダルトビデオ屋の割引券1枚・風俗店の割引券7枚・学校近くのラーメン屋の餃子引き換え券28枚。
後は、グリーンスタンプ107枚とベルマーク15枚が集まった。因みに、その15枚中で僕の持参したベルマークは8枚。
皆、根は良い奴なのだ。ただ、ベルマークとグリーンスタンプの区別がつかないだけなのである。

3月28日
ネット上にある卑猥な動画は、あまりにも夢がないと思う。

3月30日
岩崎君と同じ組になれるかどうか考えていただけなのだ。ただ岩崎君の事を少し考えていただけで、決して最初から陰茎が膨張していたわけではない。断じてそのような邪まな……。
嗚呼。僕はまた岩崎君で自慰をしてしまった。
【一度だけなら好奇心】だと過去の過ちを封印してきたのにも関わらず、何故僕は僕の脳内写真集の裏側にある岩崎君の太腿映像の誘惑に負けてしまったのか。
一度だけなら好奇心。しかし二度目は……。
嗚呼。






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