4月1日
また岩崎君と同じ組になれた。
4月2日
昨日は興奮してしまった。
自分に嘘を吐き続けるよりも、ここらで一度認めた方が自分の為になると思うので、今日は覚悟を決めてはっきりと明記しておこうと思う。
僕は、岩崎椰太郎に恋をしている。
4月3日
認めてしまえばどうって事はない。
今日も岩崎君の太腿で自慰をした。満足だ。
4月4日
岩崎君の衝撃で明記するのを忘れていたが、剛田君とも碇君とも押丼犬君ともこんちょう君とも、また同じ組になれた。嬉しく思う。
ただ、剛田君と仲が悪い司馬君も僕達と同じ組になってしまった。今日もこの2人は喧嘩をしていたが、喧嘩に負けた司馬君は嫌がらせで剛田君の原付を盗んでしまった。しかし、剛田君も嫌がらせの仕返しとして置きっ放しになっていた司馬君の原付を盗んで「15の夜」を歌いながら走り出した。
嫌がらせと言うか、原付を交換しただけのように思える。
4月8日
今日は岩崎君と少々言葉を交わす事に成功した。
岩崎君は剛田君達とは全く違う性質の不良なので今までは躊躇していたが、彼は見かけよりも随分友好的だった。
これからは友好を深める為の努力をしていきたい。
4月11日
岩崎君に好意を寄せている自分を認めてからというもの、解き放たれたかのように彼の太腿で淫らな妄想を広げつつ自慰をし続けた僕だが、だからと言って完全に同性愛者になったわけではないようだ。
何故なら今でも猫耳に萌える(覚えたので使用してみた)し、其れで自慰行為も可能だからだ。これは異常なのであろうか。
明日剛田君に訊いてみようと思う。
4月10日
剛田君が
「俺も昔はそうだったけどよ、今は仁にしか勃たねぇよ」
と、言い切ったので、放課後に僕の家に招いてそれが本当かどうか試してみた。剛田君は僕のパソコンに保存してある秘蔵動画や画像やCG集等に酷く興奮し
「スゲーな! インターネットってスゲーな!」
と、壊れたように叫びまくっていたが、僕が彼の股間をチェックすると彼は即時に九九を唱え股間の膨張率を低下させた。その卑怯な行為に憤慨した僕はその後も様々な猫耳や眼鏡教師、魔法使い、ストッキング特集等を彼に観覧させたが彼を完全に勃起させる事は出来ず、僕の敗北は目前であったのだが、
「ブルマは止めろっ!」
と、叫んだのが彼の運の尽きだった。
「ブルマは止めろ、卑怯だぞ多奈稼! チキショー止めてくれーーーーっ!!」
と、喚きつつも、しっかりモニタを凝視している剛田君に僕がブルマ特集フォルダを開いて中を見せると、彼は敢え無くその若さのエネルギーを陰茎部分に集中させたのである。
これではっきりした。人はどれだけ特定の人間を愛そうが、勃起はまた別問題なのである。
4月15日
剛田君に先日のブルマ事件についての口止めをされた。僕は碇君に告げ口するつもりなんてなかったのだが。
4月18日
岩崎君と同じ班になった。修学旅行が楽しみである。
4月19日
岩崎君はコカコーラの缶の蒐集家である事が判明。デザインが変わったり期間限定バージョンが発売されると嬉しいと言っていた。
残念な事に僕はコカコーラの缶に変化がある事すら気付かなかったので、これからは注意しようと思う。
4月20日
岩崎君は寿司ネタでは一番海栗が好きだと言っていた。
喜ばしいことに僕も海栗が好物である。
4月21日
岩崎君は僕と同じくカップラーメンの湯を線よりも多く入れると言っていた。濃厚な味を好み湯を線より少なめに入れる人間は多かろうが、僕達のように多め入れる人間は少数派のはずだ。
僕は岩崎君と味の好みが似ているようだ。
4月24日
岩崎君が僕と同じ黒地に茶色のチェックが入っている傘を持って来た。
もしかして、傘の好みも同じなのかも知れない。
と、言うか、海栗・カップラーメンの湯の量・傘の趣味、これらを総合して考えると、僕にとって岩崎君は運命の人なのかも知れないと思えてくる。
4月25日
岩崎君がカレーの福神漬けを避けているのを発見した。残念な事に僕は福神漬けが好きだ。
ただし、岩崎君は福神漬けの本来の美味さに気付いていないだけと言う可能性も否定出来ない。つまり、真に美味い福神漬けを食すれば、僕のようにカレーに福神漬けは欠かせない人間になる可能性もあるのだ。
4月26日
同じ班になると一緒に行動する機会が増え、其れ故会話を楽しむ機会も増える。そして僕は毎晩自慰に耽るのである。
5月3日
ゴールデンウィークと言うものは全く苛立たしいものだ。父はゴルフ、母はアニメ映画観賞会、僕は自慰と勉強で時間を潰すしかないのだから。
5月7日
新しい組にはフジパン派が3人しかいないのだが、その中の一人に先日自らをフジパン過激派総統と名乗った藤井君がいる。今日、僕は彼が学校にオーブントースターを5台持参して来たのを見てしまったのだが、また何かやらかす気なのかもしれない。
何せ3年になってからのフジパン過激派とヤマザキ派・シキシマ派との確執はもう目にも当てられぬ状態だし、何が起こっても不思議ではない。
不安だ。
5月8日
危惧していた通り、本日藤井君が食パンテロを行った。
彼は持参したゆであずきとマーガリンを駆使し、休み時間になる度に昨日持ち込んだオーブントースター5台を駆使して食パンを焼き、その上にマーガリンとゆであずきをたっぷりと乗せ名古屋名物「小倉トースト」を作りそれを僕達に食べさせたのである。
次々と出来上がる小倉トーストの甘い香りにつられ、僕達はまんまと藤井君の罠に掛かりそれを頬張った。いやしかし、冷凍食品ばかりが目につく冷め切った弁当や全く変化のないコンビニのパンよりも、熱い小倉トーストを選ぶのは当然の結果であったと言えよう。
そしてその結果、僕達は今日一日でフジパン本仕込み4枚切りで作られたマーガリンとゆであずきたっぷりの小倉トーストを一人平均4・5枚も平らげ、胃も垂れを起こし、持参した弁当など食える筈もなく、しかし「出された物は残さず食べる」と言う庶民の鉄の掟を守ろうと歯を食いしばってそれらを食道に詰め込み、それでもなお次々と製造される小倉トーストに眩暈と吐き気を覚え、あまつさえパンそのものに憎悪を抱くまでになったのである。
藤井君は満足だろう。
これでヤマザキ派もシキシマ派も、いや誰しも当分はパンなど見たくもないに違いないからだ。
そして僕にしてみると、恒例となっていた弁当時間の3派間での嫌がらせ報復合戦、それを止めるべく入っては巻き込まれ、被害者を装いつつも実は言い争いに油を注いでいた最大派閥ごはん派・麺類派・その他少数派連合、その間に常に蠢く主権争い。そう、弁当の時間になると法律で定められたの如く必ず勃発していたこれら様々な諍いからは、確かに当分はおさらば出来る。
しかしだ。
しかし何故気付ぬのだ、藤井君。
そりゃ皆ヤマザキのパンもシキシマのパンも当分は購入しないであろう。しかし、それはフジパンだって同じなのだ。
それに、こんな事はミッフィーちゃんだって喜ばない。
5月12日
級友の田村君の家に赤ん坊が産まれた。田村君のご両親は相当励みなさったのだろうと皆が噂をしていた。
今日明日明後日と三手に別れ、赤ん坊を拝見しに行くつもりである。
5月13日
昨日赤ん坊を見に行った者の話によると、赤ん坊は女の子のようだ。
クラスの者達はその事で持ちきりである。
5月14日
こんちょう君が赤ん坊のオムツを替えたいと発言したが、それは田村君本人よりすぐさま却下された。田村君は最善の判断を下したと思う。
それにしても、赤ん坊というものはあれほどまでに愛しい生物なのか。僕は感動した。
感動したので僕は自分の両親に
「赤ん坊が欲しい」
と、言ってみたのだが、その途端母は真っ赤になり、父は
「相手が誰か知らんがまだ早い」
と、僕を叱責した。
僕は父に叱責されるような事を言っただろうか。父は不可解である。
5月15日
クラスの者が一致団結し、昨日から熟女モノが大流行している事を田村君に気取られぬよう細心の注意を払っている。
5月18日
碇君と田村君の家の赤ん坊がどれほど愛しい存在なのかを話し合った。
碇君と僕は気が合うようだ。
5月19日
珍しく剛田君と碇君が喧嘩をしていた。夫婦喧嘩は犬も食わぬと言うが、まさにその通りであり誰も仲裁に入らなかった。
しかし剛田君が
「肛門はウンコを出す場所で、チンコを入れたり出したりする場所でもガキを産む場所でもねえーーーっ!!」
と、喚いた時、何か魂の叫びのように聞こえたのは気のせいだろうか。
5月20日
明日から修学旅行だ。
5月27日
あんな事になるとは思わなかった。
僕はただ、岩崎君と一緒にいたかっただけで。
5月28日
5月29日
岩崎君も僕を好きでいてくれたとか?
5月30日
6月3日
考えたくない。
6月5日
性行為とは、あれほど簡単に出来るものなのか?
6月8日
岩崎君は何事もなかったかのように生活している。
僕との間に起こった事は、何だったのか。
6月9日
僕達はお付き合いをしているのだろうか。
6月10日
まさか。彼の誕生日さえ、血液型さえ、好きなヘリコプターさえ、携帯番号さえ知らないのに。
6月11日
6月14日
岩崎君は何も言わない。
僕が何か言うべきなのかもしれない。
だが、何を?
6月15日
言うつもりじゃなかった。
しかしあの日、僕は自分の気持ちを打ち明けてしまった。
彼は何でもないように、まるで風呂場の脱衣所のように其処で衣服を脱ぎ始めた。僕は
6月16日
6月17日
僕は
6月18日
今日の放課後岩崎君が同級生の林君と性交行為をしているのを目撃した。
僕は遺憾の意を表明した。
6月19日
遺憾の意を表明した。
6月18日
遺憾の意を表明した。
6月19日
このままずっと土曜日だったら良い。
6月20日
このままずっと日曜日だったら良い。
6月21日
改めて遺憾の意を表明した。
涙が出た。
6月22日
死にたい。
6月23日
6月24日
6月25日
もう彼の事は書かない。
6月27日
気晴らしに剛田君の事を書こうと思う。
彼は先日僕に、
「田奈稼はどんなモビルスーツを作りたいんだ?」
と、訊ねたので、僕が
「モビルスーツではなく、僕は川崎OH-1よりも高い機動性を持ったヘリコプターを開発したい」
と、正直に将来の夢を語ったら、剛田君は酷く悲しそうに、尚且つ激しく抗議をしてきた。
しかし、僕はヘリコプターに興味があるわけで断じてミノフスキー粒子とやらに興味があるわけではないのだし、更にキュベレイの設計云々と言われても何の事か皆目見当もつかない。其れ故裏切り者呼ばわりされても困るだ。
何やら剛田君の夢を壊してしまった様子なので申し訳ないとは思うのだが。
6月28日
押丼犬君が泣きながら僕に電話を寄越した。どうやら彼の母親が、彼の秘蔵コレクションであった90式戦車のプラモデルを全て破棄してしまったらしい。僕は泣き続ける押丼犬君に、
「君の母親の目の前で「戦車が好きです」と言っても許されるのは、宮崎駿監督くらいなものだから諦めたまえ」
と、慰めの言葉をかけた。
6月29日
最近パン派同士の抗争はほぼ完全に沈静したようだが、代わりに麺類派の抗争が表面化してきた。素麺派・冷やし中華派・ざる蕎麦派・冷やしうどん派・その他少数派連合は日々思い思いに様々な主張と共にそれらの普及に励んでいる。今日は素麺派が麺と汁と薬味を持参して素麺普及懇親会を開いていた。
夏になると各派がそれぞれ試食会を開いてくれるので最大与党であるごはん派に所属する僕は嬉しい限りだ。
6月30日
今日剛田君と司馬君と僕で競馬について語り合った。と、言っても、僕は賭け事に詳しくないので2人の話を拝聴していただけなのだが。
話によると2人は今年の春のクラシックで大負けしてしまったらしい。僕が
「予想と大きく違ってしまったのだね」
と、言うと、剛田君は突然
「俺の予想はよく外れるんだ。予想が外れる事に関しては俺はニュータイプの域に達してるんだ。だってよ、俺のウンコ穴だって元々はウンコ専門穴だったんだんぜ!」
と、叫んだ。
剛田君は前途ある若者であるが、どういう脈絡で物事を考えいるのかは不明だ。
6月31日
今日、不可解な事が起こった。
学校から帰って来ると僕の部屋に岩崎君がいたのだ。
僕はひたすらに驚き、これは幻ではないかと疑い、頬を何度か叩き、痛くなるまで目を擦ったが岩崎君は確かにそこに存在していた。
僕は如何なる理由で彼が来訪したのか知りたかったが、彼は結局僕と一言も言葉を交わさず、いや、僕も彼に語りかける事はなく、彼は僕の家でただ飯を喰らいただ風呂に入り、そして帰って行った。
僕は彼を忘れたいので、このように僕の心を乱す行為は謹んで頂きたいものである。
7月1日
今日も岩崎君の訪問を受けた。
彼は今日も僕の家でただ飯を喰らいただ風呂に入り、僕の部屋で持参した漫画を読んで時間を潰していた。
僕はもう自分は彼を好きではない事を自らに言い聞かせるため、彼の帰宅後に猫耳で自慰を行った。なかなか集中出来なかった。
7月2日
岩崎君は剛田君の原付で僕の家に来た。
今日も一言も言葉を交わしていないので何故剛田君の原付で来たのかは分からぬが、予想するに、剛田君の原付を司馬君が乗っていたのを思い出し、その司馬君からまた原付を交換したのだと思われる。つまり司馬君は今現在岩崎君の原付に乗っている筈なのだ。これは遺憾に思う。いや羨ましく思う。
7月3日
今日も岩崎君が来た。
ところで司馬君に尋ねてみたところ、司馬君(剛田君)の原付は確かに昨日何者かに盗まれたらしい。そこで司馬君は岩崎君の原付を盗んだのだが、結局それも剛田君に盗まれたとのことだ。つまり、岩崎君の原付は剛田君が乗っている。
どうやら原付がクラス内でグルグル回っているようである。
7月4日
岩崎君は海栗が好きなので、母に頼んで今日は寿司にして貰った。岩崎君の分に海栗が多くなるよう配慮もして貰った。
7月4日
岩崎君と言葉を交わしていない。
僕は彼が気になってしょうがない。
しかし彼は平然と僕の部屋にあがりこみ、ただ飯を喰らいただ風呂に入り、たまに僕のベッドを占領して持参した不良少年専用雑誌みたいなものを読んでいる。
僕は岩崎君があのように南米系のどこぞの民族のようなピアスだらけや刺青だらけの体になるのかもしれぬと思うと気が気でならない。
7月5日
岩崎君が何をしたいのか皆目見当もつかない。
7月6日
岩崎君が見られるように、僕は風呂に行く前にPCを起動させネットに繋ぎ、コカコーラコレクターが集まるサイトを表示させておいた。
7月7日
七夕だ。
近所で花火大会をしていたので観に行きたかったが、如何せん岩崎君が訪問しているので行けなかった。岩崎君が僕の家でただ飯を食らおうと、僕達はまだ一言も言葉を交わしていないのだ。
しかし、岩崎君と僕の部屋のベランダで花火を観た。
彼と一緒にいる時間は、一緒にいる時は滅多矢鱈と長く感じるのに、彼が帰って行くとあまりにも短いような気になってしまう。
切ない。
僕はまだ彼に恋をしている。
7月8日
岩崎君が来なかった。
7月9日
今日も来なかった。
どうしたのだろう、学校には来ているのに。
7月10日
母に頼んでもっと海栗を食べさせてあげれば良かった。
7月11日
そうだ、海栗のせいだ。きっとそうだ。
毎日海栗を出してもらえば良かった。
7月12日
もうすぐ夏休みが始まる。
岩崎君はきっともう来ない。
7月13日
7月14日
7月15日
僕達は傘の趣味だって一緒なのに。
7月16日
学校の蕎麦派とそうめん派の確執なんて、もうどうでも良い事だ。
7月17日
7月18日
岩崎君は林君とお付き合いをしていたのかもしれない。
僕は悪い事をした。
7月19日
明日謝罪しよう。
7月20日
今日は信じられない事が起こった。
学校に岩崎君が来なかったので、僕が謝罪出来ず困っていると、彼は僕の家に遊びに来ていたのだ。
それだけではない。彼は僕に。
僕に謝罪してくれた。
彼は
彼は
彼は
ともかく僕は膝を正し、彼に、結婚を前提とした誠意あるお付き合いをする事を約束したのである!
明日から大変だ。まず養子縁組について勉強し彼のご両親に挨拶をし剛田君に交渉して彼の原付を返して貰い彼に海栗を食べさせ、コカコーラの歴史について彼に語ってもらって僕はその代わりに川崎OH-1について彼にその全てを教え込み、傘の趣味が同じだと言う事を明かして彼を驚かせ、それからそれからそれからそれ
そうだ。
彼に猫耳を装着しても良いか、訊いてみなくては!