暖かで不思議な夢を見た。
俺は母ちゃんと姉ちゃんと3人で、誰かの墓参りに行く。誰の墓なのか分からないし、それが本当に墓なのかも怪しいものだった。何故ならそこには墓標も墓石も何もなかったのだ。
目の前には切り立った崖と真夏のような青い空、取って付けたような白い雲、崖の下には青いと言うよりも藍色に近いような海が広がり、波が岩に当たって飛沫をあげている。それはあまりにも美しい誰かの夢の中のようだった。
「響湖」
母ちゃんの声だ。でも、それは今の母ちゃんの声ではないみたいだ。
俺は黙って海を見ていた。母ちゃんも姉ちゃんも見ないで、ただひたすら海を見ていた。
海からの風が舞い、目の前に長い髪が揺れた。姉ちゃんの髪だと感じたが、俺はそれでも黙って海を見ていた。
俺はその夢で、結局誰の姿も見なかった。自分の身体も見えなかったし、母ちゃんと姉ちゃんの気配だけを感じ、そして誰かの墓らしいその場所で深い海を見ているだけだった。
夢が変わる。
俺は小学生のようだった。
大きなランドセルを背負って家の近くの神社を通り過ぎようとしている。季節は冬で道に薄っすらと雪が積もっていた。誰の足跡もないから早朝のようだ。朝が苦手の俺がどうしてこんなに早起きし、そしてランドセルを背負っているのか分からない。遠足か何かの行事なのだろうか。しかし俺の足取りは普段と変わらず淡々としていた。
…そうだ。俺はあの頃、変な子供だった。
記憶が曖昧なのだが、とにかくあの頃の俺は何でも興味があるようで、何にも興味がないような子供だった。元気があって友達にも大人からも好かれていたが、特に社交的なわけでもなかったはずだ。家で黙り込んでいる時が一番心地良かった。
夢の中で昔の自分を思い出していると、夢の中の幼い俺が足を止める。
狛犬に目がいった。
一対の狛犬は母ちゃんのようだった。
一方は噛み付きそうな勢いで口を開け、もう一方の口は歯が軋む音が聞こえる程きつく結ばれている。
じっと見ていると、狛犬は今にも力強く動き出しそうだった。
いや、このまま見ていれば本当に力強く動き出すだろうと思った。
「春樹」
後ろで俺を呼ぶ姉ちゃんの声が聞こえた。
夢が変わる。
俺は中学生のようだった。
この頃の俺は今の自分とあまり変わらない。元気一杯で社交的でよく喋る普通の中学生だ。
走って家へ帰ると、姉ちゃんがいる。母ちゃんはいたりいなかったりだった。
「おかえり」
姉ちゃんはココアのクッキーを焼いてくれていた。俺の大好物だ。
「今日は何があったの?」
いつもと同じように訊かれる。
俺はココアのクッキーを食べながら冷蔵庫から牛乳を出し、自分専用の笑っている太陽の絵が付いた黄色いコップになみなみと牛乳を入れている。
「今日は誰とどんな話をしたの?」
姉ちゃんは俺が出した牛乳を冷蔵庫へ戻し、またいつもと同じ事を訊いてくる。俺はそれに何か一生懸命答えているけれど、どうしても自分の声は聞こえない。耳に水が入っているような感じで、自分の声だけが酷く聞き取り難かった。
姉ちゃんに身振り手振りを加え今日の出来事を報告していると、俺の腕が黄色のコップに当たった。俺はそれを掴もうとしたけれど、手がコップの前でピタリと止まる。充分掴む事ができたのに、俺専用の笑っている太陽の絵が付いた黄色いコップは床に落ちてカシャンと割れてしまう。
姉ちゃんは何も言わずに立ち上がり、割れた黄色いコップを片付けた。
俺は黙ってそれを見ていた。
次の日、母ちゃんが怪我をして家に帰って来た。
夢が変わる。
俺は永司に抱かれていた。
今年の夏の夢だ。
俺達はあの真っ暗になる部屋で互いの身体を貪り合っている。俺は永司の汗ばんだ身体にしがみ付き、その緩やかなリズムを感じていた。
小さく永司の名を呼んでみるけれど自分の声は聞こえない。
でも、永司の熱い吐息は聞こえる。
「春樹」
耳元で低い永司の声がした。
俺はその囁きに弱い。耳元で感じる吐息は俺の身体を熱くさせ、その囁きにもっと深くまで永司を飲み込もうと身体が無条件に反応する。
「春樹好きだよ」
自分の身体の奥が、その言葉にぞろりと動く。
「春樹愛しているよ」
永司の手が俺のペニスに触れ、指の腹でつつと撫でていく。
「春樹愛してる。愛してる。愛してる愛してる……」
俺は永司の名を呼びながら身体を動かした。永司から逃げるためではなく、もっと深くまで飲み込む為に身体を動かした。永司の唾液を飲み込む度に、自分でも分かるほど身体が喜んだ。だから何度でも唾液を飲み込んだ。もっと欲しいと強請った。
永司は全身で俺を愛し俺の為だけとも思えるような献身的なセックスをする。俺はそれを充分すぎるほど味わい永司によって与えられる極上の快楽に耽る。
永司が俺を深く抉った。
もう一度、深く。
俺は永司の身体にしがみ付きながら声を上げ何度も精を吐く。
目が覚める。
熱が完全に下がりきってないのか、視界が揺れていた。
部屋は真っ白で天上が高い。病院なのだろうか思いながら見渡すと、どうも誰かの部屋のようだった。
誰の部屋だろう。
小さな黒いテレビと大きな茶色い本棚があって、このベッドのシーツは薄い緑。手を上げて見てみると、俺が着ているのは青色に黄色のチェックが入っているパジャマ。
あとは何も分からなかった。
どうして永司がいないのだろうかと思いながら、それでも永司の名を呼んでみようと口を開けてみて気が付いた。
声が出ない。完全に枯れている。
まだぼんやりとした頭で今自分がどこにいるのか考えてみたが、この生活感のない部屋の持ち主に検討がつかなかった。
目を開けているだけでまたしつこい頭痛が始まり、俺は静かに目を閉じる。
ここがどこか、今は何時か、永司は近くにいるのか。そんな事がぐるぐる頭を回ったが、俺の身体はまだ高熱があるようで結局またすぐに眠ってしまった。
どこかで美しい音楽が響いていた。
目が覚める。
汗をかいたようでシーツが湿気っていた。
だるい身体を起こしこの部屋を見渡すが、
やはり誰もいなくて部屋はシンと静まり返っていた。
熱が下がったようで身体は何とか動く。ベッドから降りてみようと毛布を捲り、足を動かした時にジャラリと音がした。
……?
まさかと思いつつも恐る恐る足元に目をやると、そこには鉛色の重そうな鎖が俺の左足首に繋がっている。足枷にはわざわざ布が巻きつけられており、足が傷つかないように施されてあった。
マジっすか…。
監禁されたと思うと怒りより先にその馬鹿馬鹿しさで苦笑した。手を繋がれていたら間接を外せば良いのだが、足の枷はどうにもならない。犯人は誰だと思いながらその鎖に触れてみると、鎖は左足首からかなり長くジャラジャラと絡まっており、最後にベッドの寝台柱に繋がっているのが分かった。上に引き抜こうと思っても頭部板で引っ掛かり、下から抜こうと思っても床架がある。これを外すのはどう足掻いても無理そうだ。
頭を掻きながらとりあえずこの部屋を見渡す。
6畳。小さな窓があったがかなり高い場所にある。外は暗い。部屋にはベッドとテレビ、本棚しかなく、扉がひとつ。本棚には小説類と宇宙や科学の雑誌が並べられている。
俺は身体を起こして床に立つ。フローリングは少し温かく、床暖房のようだった。
パジャマをはだけて確認してみたが、何かをされた痕跡はない。
それから大きく背伸びをしてから足先手先の感触を確かめ、ゆっくりと身体を屈伸させる。まだ少し気だるさが残っていたが、それでも体調は随分と良くなっていた。軽く柔軟してから右足で空を切る。身体を反転させ逆の足でも同じ事をし、それが終わると右拳を真っ直ぐに突き出した。
切れは悪くない。
そう確信し、俺は扉の前へ立った。
気配なし。扉の向こうにはきっと誰もいない。ノブを回して扉を開くと、5メートル程の廊下があった。廊下の途中で扉が2つ、突き当たりにまた扉。
俺は歩き出す。
途中左手にある扉を開けると、そこは白くて綺麗なトイレと浴室だった。両方を覗き込んでからまた廊下に出て、今度は右手の扉を開けようとしたが、そこは鍵がかかっていた。それから突き当たりの扉まで行く。この扉の向こうには誰かいるようだった。
俺は緊張していなかったし、俺の勘も何も告げては来なかった。
ノブを回す。ギイと低い音がして、扉が開いた。
「おはよう」
扉の向こうには見知らぬ男がソファーに座っていた。
俺は何か言おうとしたが、喉が枯れていて声が出ない。男に近付こうと思って足を前に出したが、ここまでが足の鎖の限界だった。
「変な事をしてすまないと思っています。しかし明後日には君を解放するつもりですよ」
男は微笑しながら悠然と話す。俺は何も言えなかったので、とりあえずこの部屋を見渡した。
キッチンと繋がったリビングのようだ。奥に扉がひとつと、右手にバルコニーに続くガラス戸。部屋は白で統一されているようで、壁紙も天上も白い。大きなテレビと白いソファー。そのソファーに男が座っている。
男は20代後半から30代。紺のワイシャツの上に白いセーター、下は紺のジーンズ。顔は作られたように整っていて、人間味に欠けていた。テレビで人気の俳優と雑誌のモデルの顔のパーツをひとつひとつ取って貼り付けたような、なんとも不思議な二次元的な感じがした。
「声、まだ出ないかな?」
男は訊いてくる。俺は男を無視し、自分の左足を指した。
「申し訳ないとは思っているけれど、絶対明後日には開放するからもうすこしだけ辛抱してくれないだろうか」
男の瞳はガラスのように無機質な物で、俺には何も読み取れない。
「お腹減ってないかい?」
男は黙っている俺を見て、冷蔵庫から封を切っていないミネラルウォーターの小さなペットボトルを出し、俺に近付く。
俺は静かに息を吐き手足に神経を集中させる。
が、男は途中で立ち止まり、
俺が手を伸ばせば掴めるギリギリの位置にペットボトルを置いた。
「君には近付けないから、悪いけれどここに置かせてもらうからね。それと、お粥を作ったら食べてくれるかな?」
俺が黙っていると、男はキッチンへ行って鍋を取り出す。
何もする気にならなかったので、俺はそのままこの部屋を出た。
先程まで寝ていた部屋に戻ってテレビを付けると、NHKのニュースが始まっていて、俺の大好きなワシントン支局長が詰まりながらも一生懸命情勢を説明していた。ワシントンからの中継が終わり日本のスタジオに戻る。女性キャスターの顔を見て、今が10時過ぎだと分かった。チャンネルを変えるとバラエティー番組が映る。
ベッドの上でテレビを見ながら、俺は意識を無くしてから20時間程ここで寝ていた事になるだと考えていた。新生祭が月火、火曜の夜に気を失って今が水曜の夜、もし本当に明後日解放されるのならば金曜か。
俺はあの男が何故か全く怖くなかったしハッキリ言ってどうでも良かった。こんな状態は長く続かないし続かせるつもりもない。手はいくらでもある。
ただ、俺が唯一心配しているのは永司だけだ。
永司は今どんな気持ちでいるだろうと思うとそれだけで胸が痛む。アイツは今どんな事を思い、そしてどんな状態だろうか。俺の事を心配して寝ていないに決まっているし、メシだって食ってないだろう。血眼になって探しているに違いない。一番に石塚を疑うだろうからきっと石塚にも迷惑をかけている。永司は怒っているだろうから、石塚に変な事を言ったりしたりしてなければ良いが。
「ごはんできたよ」
男の声が聞こえた。
俺はどうしようかと思ったが、とりあえずリビングまで足を運ぶ。
「あ、来てくれたんだね。良かった。私が作ったお粥と、あと水と牛乳とパンとクッキー、コンビニのオニギリ。好きなものを選んで好きなだけ食べてください」
男はそれらをゴチャゴチャとトレーに乗せ、俺に少し近付いてからトレーを床に置いた。それから俺の手が届く範囲までトレーを滑らす。見てみるとコップは紙コップ、粥が入っている容器もスプーンもプラスチック製で、何も小細工ができないようにしてあるその徹底した警戒振りに俺は感心してしまった。
身体を伸ばしてトレーを取り、俺はまたベッドのある部屋へと戻り、粥を見ながらあの男の事を考えた。
あの男は何を考えているのかサッパリだが、賢い。多分俺が男を警戒している以上に、男は俺を警戒している。俺と自分の体力の差を完全に理解しているのだ。トレーに乗せてあるモノも見てみると納得いく。できればこの粥を食べて欲しいのだろうが、何が入っているのか分からないと疑心暗鬼になって粥に手を出さない可能性を考え、コンビニで売っているパンとオニギリが用意されている。それすらも手を出さないのなら、
この封の切っていないペットボトルの水だけでも飲めって事だろう。
いざとなった時、身体が動かない可能性がでてくるハンガーストライキは好きではない。それにすでに丸一日何も食べていない状態なのだから、脱水症状になったらシャレにならん。この身体が一番の武器なのだから、断食は最終手段で使いたい。
俺は粥を見ながら結論を出し、とりあえず明後日までは食えるだけ食っとこうと袋に入っているスプーンを出した。
粥は薄味だが美味かった。塩加減が丁度良く、真ん中に乗っている梅干しも俺の好きな少し甘めの味だ。俺はベッドの上でテレビを見ながら粥を食べ、ペットボトルの水を飲んだ。最後に煙草が吸いたくなったがそれは我慢して身体を横にしていると、男の事と今の自分の事、そして男の言葉の意味を探るためにもう一度リビングに戻った。
トレーからクッキーと牛乳を出し、残りを持って行く。
扉を開けると男はさっきと同じ状態で座っていた。
「食べてくれたんだね。ありがとう」
男はトレーを見て言う。
俺が指で何かを書く真似をすると、男は頷いて紙とペンをトレーに乗せて寄越した。
『ここどこ?』
俺は書いてトレーを滑らせる。明後日には解放すると言う男の言葉は真実かどうか。
「私のマンションです」
トレーを寄越してもらう。
『これは誘拐?』
トレーを戻す。
「私は深海君の味方ですよ。ただ今の私には、君をここに監禁しなくてはならないかなり込み入った事情がありまして」
男は微笑している。
俺は男の瞳から何も読み取れない。
『もしお前が本当に俺の味方なら、ひとつ頼みがあるんだけど』
「どうぞ」
『ある人間に、俺の無事を知らせて』
「岬杜君の事かな」
永司の名前が出て驚いたが、まぁとにかく頷いた。
「岬杜君には知らせれない。何を言っても彼は心配するだろうし、私の身も危なくなる」
『俺は明後日に帰る、それだけでも良い』
「彼の財力を考えると私はヘタに動けないんだ」
確かにこの男は慎重だから余計な事はしたくないのだろう。
「明後日には必ず帰すから、それまで辛抱して欲しい。君にも、岬杜君にも」
明後日明後日と、コイツは何がしたいのだろうか。
どうしようかと悩んだが、男の瞳からは何も読めなかったからしょうがなしに核心を突く。
『お前の目的は?』
「そうですね。まず君の風邪を治してあげたい」
『本当の目的は?』
男は微笑したまま何も答えない。
俺はこのまどろっこしいやり取りにイライラしながら答えを待ったが、どれだけ待っても男は答えなかった。
トレーを戻してもらう。
『永司本人に連絡しなくても良いから誰かにコトヅケを頼んで』
「駄目だよ。岬杜君はどこでどんな動きをしているのか分からない。彼は全力で君を探しているだろうから、私は動けないんだ」
『永司に俺の無事を知らせるだけで良いんだ』
「駄目」
男は断固とした口調で言う。
俺はどうしようかと悩み、
指で床をトントンと叩きながらもう一度紙にかなり汚い文字を書いた。
『煙草吸いたい』
「身体に悪いよ」
持っていたペンを思いっきり男に投げつける。ついでにトレーも投げつけた。拳で横の壁を叩き、持って来いと口を動かす。
男は黙って俺を見ていた。
俺はもう一度持って来いと口を動かす。
男が黙って立ち上がり、上着を持って出て行った。
その様子を見ながら今のやり取りを思い出し、俺は考える。
男は永司の事を知っているばかりか、俺が永司にとってどれほど大事な存在なのか知っている。だとしたらやはりコレは営利誘拐の可能性が高い。アイツの家は金持ちだし、永司は俺の身に何かあったら即座に大金を払うだろうからそれを見通しているかもしれない。が、男は素顔を俺に見せている。俺を本当に解放するつもりならば絶対に顔など見せないはずだ。それに今、俺は男にペンとトレーを投げた。男が何かを企んでいるのならばここで感情が溢れ、化けの皮が剥がれるだろうと思ったのだが、男は冷静だった。
人質は大事な切り札だが、男は必要以上に俺に気を使っている。犯罪に慣れているのか、動揺しているようにも見えないし緊張感もあまりない。
何だろう。あの男は一体何がしたいのだろう。
考えていると男が戻って来た。
「バージニアのライト。メンソールだよね?」
この男はどこまで俺と永司を調べているのか。
灰皿とライターと共に、煙草がトレーに乗って滑って来る。
「できるならここで吸って欲しいな」
俺は男の言葉を無視しそれらを取って立ち上がる。
「明後日には君は解放されるのだから、無駄で意味のない事はしないように。これは私の為でもあり君の為でもある」
振り返り男を見ると、男はもう一度淡々と言う。
「無駄で意味のない事はしないように」
俺は軽く笑ってベッドがある部屋に戻った。
ライターの火を付けてみる。
ちゃんと付く。
俺は炎を見つめながら、明後日まではおとなしくしておこうと思っていた。自分の立場がイマイチ分からないし、男の目的も分からない。この部屋にある窓には本棚を動かせば簡単に手が届くが、窓を割り助けを呼んだ場合男がどう豹変するのか見当もつかない。
しかし俺の勘は何も言わないし、俺自身に危害が及ぶような雰囲気でもない。
…よく分からん。
よく分からん時は、動かないでおこう。
俺はそう結論をだし、煙草を一本吸ってから浴室でシャワーを浴び、そこに置いてある新品の下着を身につけて、寝る前にさっき取っておいたクッキーを食べた。牛乳を飲みテレビを見ながらベッドに横になる。横になってクッキーをポリポリ食べていると姉ちゃんを思い出した。クッキーはココア味だったからだ。
横になってゴロゴロしていると、風邪が完治しきっていないせいか睡魔がすぐにやって来た。
寝る前に永司の事を考える。
永司は今何をしているだろうか。俺を心配するあまり気が変になっていたらどうしよう。石塚をボコボコに殴ってたらどうしよう。アイツ、俺の事となるとそれくらいやりそうだし。
とにかく、永司が心配だ。
自分の立場が理解できていないせいか俺は自分の事は何一つ心配せず、やけに永司の事ばかりを考え、そして眠りにつく。
どこかで美しい音楽が響いていた。