第4章 白いハイヒールの踵


 僕の心に汚い蛆虫が住み着いたのはいつからなのだろう。
 それは、僕が元々飼っていたものなのだろうか。
 僕が深海君の肌に触れる度にそれはいやらしく蠢き、低く掠れた声で『今日はこれをネタにしよう』と僕を卑猥に誘惑する。僕はその度に首を振るが、家に帰って自分の部屋に入ればやっぱり彼で自慰をした。
 ごめんなさい深海君。僕は最低です。
 何度も心の中で謝ったけれど、深海君は何も気付かなかった。


 僕が彼女に出会ったのは、高校2年の5月の終わりだ。
 書店で歴史の本を買い、帰りに近くの公園でその本を読んでいる時だった。
「オモシロイ?」
 誰かが僕に話し掛ける。顔を上げると白いワンピースを着た髪の長い女の人が立っていた。
「ねぇ、それオモシロイの?」
 彼女はもう一度訊く。
 僕は、彼女が本当に自分に話し掛けているのか不安になって周りを見た。
「ねぇ、どんな内容なの?」
 風が彼女の匂いを運び、その甘い香りが僕を包んだ。
 彼女は何も言わない僕を見ながら、僕と同じベンチに座って開いている本を覗き込む。
「勝海舟?」
「はい」
 少し頷いてから、小さな声で返事をした。何かの勧誘だったら嫌だなと思いながら。
「勝海舟が好きなの?幕末に興味があるの?」
「歴史が好きなんです」
 言いながら視線を本に戻す。でも彼女はそれ以上何も言わなかった。
 僕はそれから少しだけページを捲り、本を閉じた。隣で見知らぬ人が、しかも女性が覗き込んでいるこの不可解な状態では、本を集中して読めなかったからだ。僕はまた何か言われたら嫌だなと思い、彼女の方を見ずに立ち上がった。するとその時、バッグの中を覗いていた彼女の腕に僕の肘が当たってそれが地面に落ち、中が散乱してしまった。
「ごめんなさい!」
 僕は慌ててそれらを拾う。彼女が何も言わなかったから怒っているんだと思って、僕は俯いて何度も謝りながら散乱してしまった物を渡した。最後にハンカチを拾い綺麗に土を払う。虫が付いていたら大変だと思い、丹念に土やゴミを払ってから膝を突いたまま彼女に渡した。
「本当にごめんなさい」
「いいのよ。ありがとう」
 上から降ってくる晴れやかなその声につられて、僕は初めて彼女の顔を見た。
 そこには燦々と輝く太陽を後ろに、微笑した彼女の顔があった。
「もう帰るの?」
 彼女の瞳が子供みたいに光っていて、僕は思わず首を振る。
 それが、僕と彼女の出会いだった。

 僕はすぐに彼女と仲良くなった。晴れた日に公園へ行けば、大抵彼女に会う事ができたんだ。
 3回目に会った時、彼女は名前を教えてくれた。
 東野奈々実
 彼女は落ちていた棒で公園の砂場にこう書いてヒガシノナナミと読むのだと教えてくれたので、僕も同じように砂場に指で自分の名前を書きキシベカズヤと読むのだと言った。僕は彼女を奈々実さんと呼び、彼女は僕を和也君と呼ぶようになった。それから互いの携帯番号を教えあった。僕は携帯の着信音が苦手だけれど、 彼女に番号を教えてからはその着信音が待ち遠しく思うようにもなった。
 僕がなぜ彼女に興味を持ったかは自分でも良く分かる。彼女は深海君に似ている所があったんだ。例えば、誰からも愛されるそのキラキラした瞳と笑顔。小首を傾げながら子供みたいに人にものを尋ねる仕草。彼女がなぜさえない僕に興味を持ったのかは分からないけれど、彼女はとにかく深海君に似ている不思議な人だった。似ていないと言えば全く似ていない。でも、どこかが深海君に似ているような気がしたんだ。
 僕達はどんどん仲良くなって、一緒に食事をしたり映画を見たりするようになった。彼女は僕といても全然つまらなそうにしなかったし、それに僕達はとにかく気が合った。見る映画も歴史に関する話題も、僕が知っている事や興味がある事は全部彼女と一緒だった。
 彼女…奈々実さんは、とても魅力的な人だったんだ。
 彼女は普段何をしているのか良く分からなくて、大学生らしいのだけれども大学に行っている様子もなかった。恋人は毎週のように変わり、それでも多くの男の人が彼女の恋人候補だった。彼女の私生活は詳しく分からなかったけれど、友達は多いみたいでしょっちゅう彼女の携帯電話は鳴っていたし、彼女はそれに上機嫌で対応し僕の事を忘れてしまって随分と長電話をしたりした。 僕はそんなの平気だったけれど、そんな時の彼女は少し無理をしているように見えて気になった事もあった。
 彼女は普段はにこやかで子供みたいな瞳をしているのに、僕といる時は突然黙り込んだり塞ぎ込んだりする事があるんだ。僕はそんな彼女が、携帯電話ではしゃいで喋っている彼女よりも好きだった。
 そう、彼女は僕といる時は気分屋で、気紛れで僕をからかったり意地悪を言ったりするけれど、それでも僕は彼女が大好きだった。彼女はいつも何を考えているのか分からなくて僕を翻弄するけれど、それでも僕はそんな彼女が好きだった。
 僕は思う。奈々実さんはきっと、何をしても許されるのだと。
 突然笑い出したり怒ったりする彼女が、美しい蝶のように見えた。


「和也君は恋人いるの?」
 6月の最後の土曜日に、2人で公園に座って話をしていると奈々実さんは急に訊いてきた。
「いるわけないですよ。だって僕は…」
――格好悪いもの。
 言おうとしたけれど、砂上さんの顔が浮かんで僕は口を閉じた。
「私もいないの。いないのが良いの。いないのは淋しいけれど、いると私は駄目なの」
 いないのが良いと言いながら、それでも彼女の周りにはいつも男の人の影があった。
「どんなふうに駄目なの?」
「上手く言えないけれど、急に真っ暗になるのよ。分からないけれど、急に何も見えなくなるの。そして身動きできなくなって、呼吸すらできなくなるの。私の肌にベタベタした粘液みたいなのがついて、私はなくなってしまう。それはとてつもなく痛いのよ。そうなった事はないけれど、きっとそうなるの。きっとね。だからいつも、そうなる前に別れてしまうんだけど。そう、ウツボカズラ。今ピッタリの言葉が浮かんだわ。ウツボカズラなの。私にとって恋人は、ウツボカズラみたいなものなのよ」
 僕はウツボカズラが一体どんなものなのか分からないけれど、とにかく良いものではなさそうな気がした。
「和也君はどんな恋人が欲しい?」
 深海君が欲しい。
「僕は恋人が欲しいなんて考えた事ないです。僕はただ、目の前の障害を避けて通る人間だって事を自分で自覚しているから、恋人云々よりもそっちを何とかしたいと思っています」
 言い終わってから、僕は自分がとても腐っているような気になって悲しくなった。どうしてこんな奇麗事を言うのだろう。そんな事なんて全然思っていないくせに。
「つまずきながら生きていくのってどう思う?」
 黙って聞いていた彼女が小さな声で訊いてきた。
「奈々実さんは何かにつまずいたのですか?」
「私は良く分からないの。自分がつまずいているのか、普通に歩いているのか、それとも蹲っているのか。好きだと思っていた恋人にある日突然何の魅力も感じなくなったら、それはつまずいた事になるのかしら。デル、デス、デム、デンを覚えたらそれは普通に歩いているのかしら」
「なに?そのデル…とかって」
「ドイツ語の冠詞の変化」
 彼女はつまらなそうに言ってから、足元に落ちていた石を拾った。僕も何となく、足元に落ちていた小石を拾ってみた。それはなんの変哲もない小石だったけれど。
「僕は、人は皆つまずきながら生きていくのだと思います。でも、つまずくととても痛い。胸の痛みと手を繋いで目の前の障害を乗り越える事ができる人って、本当に尊敬します。でも僕は本当のことを言うと、そんな人は本当にいるんだろうかって思う時もありますよ。いや、もっと本当のことを言えば、そんな人はいないんじゃないかって思ったりするんです。そしてそう思う自分が嫌になります。困難に立ち向かおうとしている人を妬んでいる自分がいるのを発見して、悲しくなります」
 珍しく僕は本音を語った。こんな恰好悪い事は人には言わないんだけれど、どうしてかすらすらと言葉が出てきた。
「つまずくと痛いの?」
「痛い。本当に痛い。立てないくらい痛い。でも普通の人は頑張って立ち上がるみたいです。僕はそれがなかなかできない。できないからこんな小さい小石でも怖い。つまずきたくないから、避けて通る。こんな小さい小石なのに」
 僕は言いながら小石を投げた。彼女は自分が拾った小石を黙って見ていた。
「私はつまずくのが怖いわ」
「僕も怖いですよ」
 俯くと、彼女の手の中にある小石が見えた。彼女の手は透き通るように白くて、その中にある小石は灰色で尖っていた。彼女はそれを見詰めて、やがて足元に落とすと白いハイヒールの踵でガシガシと踏みつけた。
「私はね、和也君。痛いのは嫌だわ。考えたくもないわ。だから恋人が欲しいの。でも欲しくないの。どうしたら良いか分からないからもう面倒臭くなっちゃって、時々見ず知らずの人に声を掛ける。そしてその人とセックスをするわ」
「どうして?」
 その言葉は僕にとってかなり突拍子もないものだった。
「分からないけれど、そうする事にしているのよ。和也君とセックスしなかったのは、貴方が私にとって特別だったからなの。和也君と一緒にいると、私は普通に歩いている気になれるのよ。貴方はウツボカズラじゃないから、私は痛くはならない気がしたの。でも和也君は私の恋人じゃないから、私はやっぱり誰か知らない人に声をかけてセックスをしなければならない」
「どうしてしなくちゃいけないの?」
 僕には彼女の話が全く理解でききない。
「私以外の女の人の事なんて全然分からないけれど、とにかく私はそういうふうにしか生きていけないもの。別にセックスが好きなわけじゃないのよ?ただ、毎日3回ご飯を食べるようにそれは当たり前の事な気がするの。そうしなければ私は生きていけないような気がして。だから、言い方を変えれば私は一生懸命生きているのよ。ねぇ和也君。私の言いたい事分かるかしら?貴方だって、つまずくのは嫌でしょう?貴方だって、目の前の石を避けて歩くでしょう?それと一緒なのよ。私は一生懸命小石を踏み潰して踏み砕いている。そして、その為には男の人とセックスする必要があるの」
「どうしてそこで…ソレが出て来るの?」
 僕は人前でセックスという単語が言えない。
「自分でも分からないけれど、そうしないと困るもの」
 彼女は少し憮然としながら呟いた。
「面倒臭くなってするわけじゃないの?」
 僕は彼女が怒り出すのが怖くて、ちょっとビクビクしながら聞いてみた。
「さっきはそう言ったけれど、何て言うか、それもそうなんだけれど。上手くは言えないわ。和也君だって、自分の心の中にあるクシャグシャしていて攻撃的でベソベソしていて赤色や青色や灰色が混ぜこぜになった部分を言葉でキチンと説明できないでしょ?」
 本当の事を言えば彼女の話は少しも理解できないけれど、僕は少しだけ頷いた。
 彼女は恋人がいないのは淋しいけれど、いないほうが良いと言う。彼女にとって恋人はウツボカズラなのだと。彼女は一生懸命小石を踏み潰したり踏み砕いたりしていて、そしてその為に見知らぬ人に声を掛けて、そしてセックスをするのだと言う。そうしなければ生きていけないと。
 自分の中にあるグシャグシャしていて攻撃的でベソベソしていて赤色や青色や灰色が混ぜこぜになった部分。
 僕の心の中の、彼女の心の中の。
「奈々実さん」
 僕は何も言う事なんてないはずなのに、彼女の名前を呼んだ。 右側に座っていた彼女が僕を見る。
「なに?」
 彼女の話は全然理解できないけれど、僕は…。
 僕は、なんだろう。言葉が出ない。
「もしかして、和也君本気で私の話を聞いていた?」
 彼女が急にクスクス笑い出した。それはとても意地悪な笑い方だった。
「本気で聞いていましたよ。ちゃんと真面目に聞いていましたよ」
 僕は彼女の笑い方を気にしつつも答えた。
「私の話を本気で聞くなんて、貴方は本当に馬鹿ね。本当は私、何も考えてはいないのよ。でも面白い話だったでしょ?なんか恰好良かったでしょ?」
 言いながら彼女はお腹を抱えて笑い出した。 僕は彼女がどうして笑っているのか分からなかった。
「和也君。私、貴方を口説きたかったの。貴方とセックスしたいのよ」
「僕は特別じゃないのですか?」
「だからさっきの話は嘘だってば。あーゆう話ってロマンチックに聞こえるでしょう?本当は貴方をドキドキさせたかっただけなのよ」
 彼女は笑いながら僕を見た。
 彼女は分からない。
 彼女はどこからどこまで本当の事を言っているのだろう。
「僕は良く分からないけれど、奈々実さんは好きですよ。でも、それとこれとは違うわけで…」
「違わないわよ。何も」
 彼女は僕の手を握った。
 女の人とこんな話をするのは初めてで、僕は異常に緊張してしまった。けれど彼女は手を放さなかった。彼女は僕の手を握ったまま立ち上がり、動かない僕を強引に引っ張って歩きだした。
 僕は彼女に引き摺られるように歩きながら、深海君の事を考えていた。
 女の人とセックスをする事に興味がなかったわけじゃない。僕だって男だし、深海君を好きになる前は自慰だって女の子でしていた。でもやっぱり最初は…いや、セックスは好きな人とするものであって。
「僕は…」
 深海君が好きだ。
「なに?和也君童貞?いいからこの奈々実お姉さんに任せておきなさいよ」
 彼女は変に上機嫌で、僕をぐんぐん引っ張っていく。
 僕は深海君が好きだから、もしかして一生セックスができないのかもしれない。ここで奈々実さんとセックスするのはいけないことだろうか。
 僕は、誰とセックスして誰の元に行くのだろう。

 奈々実さんのマンションは、僕の家から電車で2つの場所にあった。
 ずっと彼女は機嫌が良くて、僕はもうなにがなんだか分からないままここに連れてこられた。
 本当は期待していたのかもしれない。女の人とセックスできる事を。
 僕は奈々実さんが好きだけれど、それは恋とは違う気がした。
 でも。
 僕は何をしているのだろう。
 僕は誰を求めているのだろう。
 奈々実さんの唇は、想像以上に柔らかくて甘かった。
 舌を絡ませるキスなんて、深海君とは一生できない。
 僕は奈々実さんの体温がたまらなく悲しかった。


「深海君、おはよう」
 月曜日、僕は深海君にいつも通りに挨拶をする。
 僕はもう男になったんだよ。
 そんなふうに考えて、自分で笑いそうになった。
「岸辺、おっはよ!」
 深海君はいつもニコニコ笑っている。
 その日も僕達は普段通りに授業を受け、深海君は昼休みに秋佐田君と将棋を指し、僕は隣で深海君の応援をした。
 僕が奈々実さんとセックスしても、結局何も変わっていなかった。深海君はいつもの深海君だし、僕も自分の心を隠したいつもの僕だったんだ。
 午後に深海君は授業を受けずどこかに行ってしまったけれど、最後の体育の授業にはちゃんと戻って来た。
「ゼッケン115番深海春樹。行っきま〜すっ!!」
 大声で叫んでいる彼。 走り出して右足で力強くジャンプし、空中で身体を捻ってバーを越える。
 歓声。
 彼の満面の笑み。笑い声。
 ねえみんな、凄いでしょう?僕の好きな人は格好良いでしょう?
 彼は僕の友達です。
 そして、彼は僕の好きな人です。


 放課後に少し深海君と話をした。
 僕は彼の自転車に乗せてもらって、駅前にあるファーストフードの店で飲み物を頼んだ。
「今日の体育の記録は凄かったね。どうして深海君は部活動をしないの?」
 僕は頼んだコーヒーを待ちながら、彼の笑顔を見ていた。
「だって部活面倒臭いんだもん」
 店員が彼の頼んだコーラと僕のコーヒーを持ってくる。彼が持とうとしたトレーを僕が持ち、テーブルに運んでパイプの椅子に座る。
 周りの女の子達がチラチラと深海君を見ているのが分かった。
「深海君はつまずいたことある?」
「へ?なんだよ急に」
「ある?」
「勿論あるよ。何回もある。子供の頃はいっつもコケてたぁ」
 僕はコーヒーの中に砂糖を半分だけ入れて、掻き回す。コーヒーが湯気を出しながら渦を巻いていた。
「僕は、深海君はつまずいたことなんてないんじゃないのかと思ってた。やっぱり深海君でも痛いのは嫌?」
「イヤ!絶対イヤ。痛いの大っ嫌い。ってか、お前何言ってんの?」
 彼が小首を傾げながら訊いてくる。
 その瞳はキラキラしていて、僕は奈々実さんの瞳を思い出した。
「僕の知り合いがね、小石につまずくのは嫌だから、知らない人に声を掛けてその人とエッチをするって話をしたんだ」
 深海君は少し呆然としながらも僕を見詰め、結局何も言わずに席を立った。どこからか灰皿を持って来て鞄の中から煙草を出し、100円ライターで火を点ける。
「深海君はどうして何も言わないの?」
「なにをよ?」
「その人のこと」
 僕は彼に何を言って欲しいのだろうか。
 深海君は煙草を吸いながらコップに付いた露を指で触っていた。指に水がついて、指先が光ったのが見えた。
「だって俺、その人に会った事も喋った事もないんだぜ?なんも言えないっしょ」
 彼は指についた水を弄びながら僕を見た。
「でも、何か思う事はあるでしょう?どう思う?」
「分かんないよそんなん。んでも、生きているからつまづくのはしょうがないなんて言いたくないし。やっぱ俺には何も言えんわ」
 彼は言いながら僕を見る。
 僕は彼に何を言って欲しかったのだろうか。しかし、彼の言葉はとても彼らしいものだったので僕はそれに満足していた。
 それから僕達は店を出て、彼は自転車に乗って帰って行った。
 僕も駅に向かって歩き出したけれど、途中で何気なく振り返ってみた。
 小さくなった彼の向こうに夕日が見えた。
 その時僕は無性に彼を追いかけたくなった。彼を追いかけて彼を抱き締めて彼に口付けをして僕が最近覚えたセックスをしたかった。してほしかった。
 けれど僕はそのまま電車に乗り、そして家には帰らずに奈々実さんのマンションへ行って深海君の事を考えながらセックスをした。彼の指先に付いた水を思い出し、それを舐め取るように奈々実さんの指を舐めた。

 僕には日々膨らんでいくこの気持ちの、この抉られるような爆発しそうな身体の疼きとあまりにも重すぎるこの気持ちの、持って行き場がなかった。







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