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あれから色々なことが起きた。
腋毛が生えないと悩んでいたサスケは里抜けなんて馬鹿なことしでかすし、暁って奴等がカカシさんをヘトヘトにしたし、ペインって奴に至ってはカカシさんを父ちゃんと母ちゃんと三代目がいるところに無理矢理送ろうとしやがった。それにマダラって変なのがナツの代わりに世界征服を目論んだりもした。世界征服ってなんなの? そんなに魅力的なものなの? マダラって奴も彼女を作れば良いと思うよ!
ええっと。まずはナツのこと。
俺は何とかナツの罪状が軽くならないか色々考えてこっそり根回しもしたんだけど、全部ナツ本人によって蹴られてしまった。ナツは自分が犯した罪は自分で償うって言って聞かなかったんだ。本当に真面目な奴なんだから。でも去年、やっと牢獄から出ることを許された。今は監視付きで行動の制限もある不自由な身だけど、そのうちアカデミーに戻ることができると良いなって思う。
あ、あと、あれだけ言ったのにナツはまだ彼女を作らない。ナツは結構カッコイイから作ろうと思えば彼女なんてすぐにできるはずなのに。全くもう!
ミズキと他の四人は罪を犯すの二回目だから、まだまだ地下牢生活。たまにナツが様子を見に行ってるし、俺も遊びに行ってるよ。ミズキの奴はナツの顔を見る度に「ナツ! ナツ!」ってうるさい。そんで俺には「なんでクリームパンにミカンジュースなんだよ! しかもツブ入り!」って文句ばっか垂れてるぞ。
んっと。
木ノ葉丸は三代目のことを思い出してからも以前のように塞ぎこむことはなくなった。三代目の煙管をとても大切にしていて、たまに俺と三代目の思い出話をする。あの人がどれほど素晴らしい人だったかってことを俺達は語り合うんだ。
ナルトは俺のナルトです。俺の可愛いナルトです。大好き。この前も一緒に一楽行ったよ。アイツ、もうすぐ火影になるらしいのに「イルカ先生に奢ってもらうラーメンが一番美味い」って言うからさ、俺、いつも奢っちゃうんだよね。へへ。
サクラとサスケも良い感じに大人になってきた。あ、サスケは帰って来たんだよ。んでこの前銭湯で会ったから「腋毛生えた?」って訊いてみたら「生えると生えるでなんかダサかったから、抜いた」って言ってた。モテモテ星に生まれた人間の思考回路って分かんねぇなぁ。
その他はー。
アスマ兄ィがさ。うん。
うん。
俺とカカシさんは命を懸けて紅先生とアスマ兄ィの子供を守るよ。二人で誓ったしさ。うん。
これで全部かな?
え? ヤマブシ? ヤマブシはねー、あのねー、この前俺んとこに来てねー、「オウフ! 凌辱巫女シリーズの新作に不具合が! ムム、修正パッチが2ギガ! ムオ、グオ!」って言ってました。まぁそれで色々察してください。あと、俺があげたリムリム姫の抱き枕とおっぱいマウスパッドは大変なことになってます。抱き枕の臭いに至っては最早立派な兵器です。アイツ、なんで抱き枕には結界張らないんだろうな。
じゃあ最後に、メロンパンナのイルカと俺の運命の王子様のこと!
はっきり言って、木ノ葉の伝説になりそうな勢いです。えへ。えへへ。
いやもう、何て言うの? 俺とカカシさんの愛は世界は救うよね、マジで。いや本気で。金魚掬いみたいにヒョヒョーイと救っちゃうよね。いや、そんな別に惚気てるわけじゃなくって事実ですけど? うはは!
カカシさんは王子様であると同時に魔法使いでもあるから、夜はそりゃもう俺なんてもう、ただでさえ俺はメロンパンナ状態なのにアレコレとカカシさんが色々とまぁなんだ。わーー! もう恥ずかしいから止めて想像しないでお願い! いやだって凄いから! カカシさんのテクって異常なの! 俺はそんなカカシさんの寵愛を一身に受けてましてそりゃたっぷりとアレコレ……わーーーーー!
とにかく俺達、記念碑建てても良いくらい愛し合っちゃってます!
あ、俺のヘンテコな能力だけど、まだ残ってるみたい。前にカカシさんがペインにやられた時は俺はまた大雪を降らしちゃったし、その後もカカシさんって何度か死にかけてるんだけどその度に天気は大荒れに荒れる。悲しい時じゃなくっても満月の夜はやっぱり変なもん降らせちゃうみたいだし、昨日は「ネギ」を空から降らせたそうだ。我ながら本当に意味が分からん。俺、「今日は鍋でも喰いたいな」とでも思ったんだろうか。
「俺の力って何なんだろう。何でこんな力持ってるんだろう。俺って何者なんだろう」
夕ごはんで食べた鍋の片付けをしてから、カカシさんにベッタリと凭れかかってそう一人ごちた。考えても無駄なことだとは分かってるんだけど、自分のことが分からないのは少しだけ怖いからたまに不安になる。
カカシさんは巻物を読みながら俺の肩に手をやって抱き寄せ、頬にキスをしてくれた。
「キスー。おくちにキスー」
「はいはい」
ちゅっちゅと音が鳴るようにカカシさんは可愛いキスをしてくれる。俺が強請ればカカシさんは何度でもキスをしてくれるんだ。そして俺は何度でもカカシさんにキスを強請っちゃうんだ。
「実はねぇ。俺は最初、『うみのイルカは何者なのか』を知りたくてイルカの恋人役という任務を受けたんだよ」
「へ?」
「だって興味わくじゃない? 空から変なものを降らせることができる人間なんていやしない」
結構ハッキリと言われた。興味本位だったということを。
ショック! メロンパンナのイルカ、ショック!……ってなりそうになったけど、でもま、そう思うのは当たり前か。と思い直す。俺が逆の立場でも「うみのイルカ」に興味津々で近付いちゃうね。
「で、何者か分かった?」
俺はカカシさんの頬に自分の頬を摺り寄せて、猫みたいに甘えながら訊ねる。
「空から色んなものを降らせたり、ラピュタを作ったり、人が生きた痕跡をまるっと消せる。そんな荒唐無稽なことができる存在と言えば―」
カカシさんはそこで言葉を切り、捉えどころのない微笑みを浮かべた。
それは本当に久々、何年振りか十何年振りかに見る謎めいた微笑みだった。
完