暁のペニス

420話&421話ネタです。単行本派の人は要注意。

 木ノ葉崩しから数年しか経っていないというにも拘らず、この里の奇襲に対する初動の遅さは少し残念なものがあった。
 過去から何も学んでいないのだろうか。もう少しやり応えというものがあると思っていたのに。
 彼はそんなことを考えながら、自分と対峙し硬直している中忍らしき男に九尾の居場所を問う。
「さあ言え」
「お前のような顔中ピアスだらけで変なマントを着ている怪しい風体の奴に、何も話すつもりはない」
 ピアスを外してタキシードを着ていたら教えてくれたのだろうか。
 多少疑問に思いつつも彼はただ「そうか……」と呟き、顔に傷があるその中忍らしき男を殺そうとした。
 しかしその時颯爽と現れたのは、ビンゴブックにもよく特集されるはたけカカシ。漸く殺し甲斐のある忍がやってきたと、彼は内心喜んだ。
「派手に暴れて注意を引いて、片や陰でペイン×イルカ本創作か…」
 意味が分からない。
「カカシさん! 俺、危うくその変な黒光りしたモノで犯されそうになりました!」
 殺そうとしただけだ。
 そもそもこれで如何わしいプレイを行ったことなど一度もない。小南は怒るとすぐ紙になってどこかへ行ってしまうし。というか俺は童貞だ。そのような高等プレイなど身に余る。
「イルカ先生にこんな硬くて黒光りしてヌメヌメしてるものを突き付けて、透明な汁やら青臭い白い汁をしたたらせようとしたなんて……この変態!!」
「そうして自分の手で持っているんだから分かるだろうが、これはヌメヌメなどしていない」
「カカシさん! コイツ暁のペニスですよ!!」
「俺は確かに暁だがペニスではなくペインだ。そのような肉体の極一部の名称ではない」
「イルカ先生を変態的ピンチに晒すとは、流石暁のペニス!」
「俺はペインだ。肉体の特定部位の名称と混同するな」
 彼は少し残念に思った。自分の名はそれなりに轟いているはずなのに、どうしてそのような肉体の一部の名称とピンポイントに合わせて間違えられているのだろうかと。
「とにかく、俺のイルカせんせに汚いチンコ突きつけるんじゃないよ!」
「これは性器ではない」
「このペニス!」
「俺はペインだ。話を聞け」
「カカシさん! 俺、ペニスで死にかけましたよ! ペニス! ペニスに死す! みたいな!」
「俺はペインで、これはペニスではない。人の話を聞け」
 彼は少し戸惑いを覚えた。
 こう、もう少し、ちゃんとやって欲しい。
 それから中忍らしき男の足元で倒れている男が、苦しそうに呻いているのだが良いのだろうか。彼等的に。
「しかし黒いチンコだねぇ」
「俺、そんなチンコよりカカシさんのピンクチンコの方が絶対好きですから!」
「イルカせんせ、そんな嬉しいこと言わないで。俺、勃起しちゃう!」
「カカシさんそんな変態的黒チンコに負けないで!」
 大蛇丸が暁に在籍していた頃、木ノ葉の話題になる度に「あの里、ちょっとおかしいのよ!」とオカマ言葉で随分文句を言っていたものだが、そしてイタチもいちいちそれに同意していたものだが、なるほど今なら彼等の気持ちが少し分かると彼は思った。
「……うう…イルカ、そろそろ俺ヤバイ…」
 足元に転がる男が不憫で仕方ない。
「ともかく、九尾の居所を吐け。でなければ殺す」
「カカシさん! 昨日のモミジちゃんの新曲聴きました? あ、ペニスが何か言ってます」
「聴いた〜! モミジちゃん超可愛い〜っ。で、ペニス、何だって?」
「九尾の居場所を言え。それから俺の名前はペニスではない。ついでにお前達の今月の生活目標は、人の話をちゃんと聞く、にした方が良い。大きく紙に書いてトイレにでも貼っておくと良かろう」
「短く纏めてくれないか?」
「ペニスではなく、ペインだ」
「え、ペニスじゃないの?」
「ペインです」
「……うう、イルカ…早く俺を病院に…」
「カカシさん騙されてはいけません! こいつ絶対暁のペニスですよ! 誰かの名を騙って逃れようとしてるんです!」
「そうだよねイルカせんせ! わーー、ペニスペニス〜!」
「私はペニスではなくペインです」
「ペ・ニ・ス! ペ・ニ・ス!」
「My name is not penis」
「あ、俺外来語分かんない」
「私の名前はペニスですって言いました。カカシさん、俺英検3級持ってるから間違いありません!」
「……うう、イルカ助けてくれ……」
「わたしは、ぺいん、という、なまえです」
 彼は、とてもゆっくり言ってみた。
「ふーん」
「へー」
「……うう」
「ぺにす、じゃ、ないよ」
「そ」
「なーんだ」
 漸く分かってくれたようだった。
 彼はほっと胸を撫で下ろし、話を次のステップに持っていこうと思った。
 思わぬところで思わぬ時間を食ったものだ。
「あ、そろそろ俺行かないと。何か暁のペニスが襲撃して来ているらしいですから。カカシさん愛してますよ! じゃ、そこのチンコ、またね!」
 中忍らしき男がやっとこさ負傷者を抱えて、自分にも手を振って去って行くのを彼はぼんやりと見送った。
 少し疲れた。
 彼は小さく息を吐いて名高いはたけカカシと向き合った。
「ところでチンコ、お前は何しに来たの?」
 緊張感溢れないカカシの問いに、彼は確信した。
 これは苛めだ。間違いない。
 最近暁の仲間になったうちはサスケが言っていた。木ノ葉の話題になる度に、自分がどれほど辛い目に遭って来たかサスケは滔々と語ったものだ。
 俺は強い忍になりたかっただけだ。それが無理だったとしても、普通の忍者に、とにかく、ふつうに忍者がしたかったんだと。それなのに木ノ葉にいると、斜め上、しかも少し後方に向かって進まされるのだと。
 それはきっと、自分に才能があったからに違いないとサスケは言っていた。あれは苛めだったんだと。サスケのアカデミー担当者は変わり者で、担当上忍師もド変態だったそうだ。サスケはそれを、うちは一族であり才能溢れる自分に対する里の嫌がらせだったのだと常々主張していた。

 苛めが横行する里、木ノ葉!
 何て恐ろしい。

「ねぇチンコ。俺、そろそろ暁狩りに行かなきゃなんないんだけどー」
「なんどもいいますが、わたしは、あかつきなんです」
「え? やっぱり暁のペニスなの?」
「もういちど、はなしを、さいしょから、いうから、ちゃんと、きいていてね?」








「しゃーんなろーーーーーーーーーーーー!!!!!」
 サクラの怪力が爆発し、巨大ムカデが撃沈した。
「サクラ!」
 サクラの元へイルカが降りて来る。
「大丈夫か?」
「イルカ先生、一体何が起こってるんです?」
「暁のペニスだ。ナルトの可愛いお尻を狙ってる変態が直接攻めとしてチンコ剥き出してきた!」
 なんてことなの!
 サクラはそのカップリングに少しトキメキを感じつつも、ナルトの尻方面を少し案じた。
「綱手様にはすでに連絡した。すぐに鬼畜攻め警報が発令されるだろう」
「…まさか鬼畜攻めで来るなんて…」
「お前も気をつけろ! 暁のペニスは両刀かもしれん!」
「大丈夫です! 私、サスケくんのペニス以外興味ありませんから!!」
 ニッコリと笑い拳を握るサクラを見て、イルカは嬉しそうに笑う。
「その気持ち分かるぞ! 俺もカカシさんのペニス以外に興味はないからな!!」

 戦場の中、二人はガッチリと握手をかわすのであった。

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